2025年9月30日火曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた54

一般的に飲食店のお手洗いは、目に触れにくい場所にあると思う。店内入り口付近や、お店の奥など、テーブルから見えにくい位置に設置してあるイメージだ。しかし僕とDさんが利用した居酒屋のお手洗いは、そうではない。お店の真ん中付近にある。真ん中にあるのは別に構わない。が、お手洗い出入り口に暖簾などの目隠しが一切されていないので、コの字カウンター席の座る位置によっては、お手洗いを出入りするお客さんがバッチリ見えてしまうのだ。そういうわけで、お手洗い出入り口の洗面台に立つ立たない人、手を洗う人手を洗わない人も、完全にわかってしまう。まあここは酒場なので、通常ならばいちいちそんなことをチェックしないし、気に留めることはないが……そう、通常ならば……。


2025年9月25日木曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた53

Dさんのやり直し誕生日パーティーの話を聞いている間に、注文した料理は全てテーブルに到着。僕は彼女の話に呆気に取られてあまり料理を味わえなかったが、Dさんは饒舌に話しながらも、その間にしっかり完食していて、器用だなと思った。ちなみにDさんは、やきとんに添えられた紅生姜の味噌がお気に召したらしい。僕もこの紅生姜味噌が大好きだが、少々ケミカルな風味がするので好みが分かれる薬味だと思う。でもDさんは「美味しい美味しい」と言って、食べていた。こういうDさんの美味しそうに食べる表情は、本当に魅力的なのに……。
 
 

2025年9月22日月曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた52

「もう一度誕生日プレゼントを買い直してもらって、私の好きなレストランを予約してもらって、ケーキも用意してもらって、二回目の誕生日パーティーをしました」
「に……二回目ですか……?」
「当たり前ですよ。彼女の誕生日を忘れる彼氏なんて、ありえないです。当然やり直しさせますよ。二回目の誕生日パーティーは私がプロデュースしたので満足しましたけど、元彼にはすっかり冷めちゃって別れました。彼女の気持ちを察することができない、彼女を喜ばせることも自分で計画できないんだなあって、がっかりしちゃって」
 

2025年9月19日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた51

Dさんのペースに引っ張られてしまった僕は、気持ちがどんどん冷めていき、美味しくお酒が飲めなくなっていた。そのマイナスの感情に至るまで色々な出来事や葛藤があった訳だが、一番はDさんが店員さんに横柄な態度をしたこと。あの強気な口調と高圧的な振る舞いは、決定的だったと思う。既に僕の思考は、"いかに早くこの会を終わらせるか"になっていた。
 

2025年9月17日水曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた50

「……Dさん、焼き物を頼んだら次のお店に行きませんか?蒲田の飲み歩きは、さくっと飲んでささっと出るのがルールです」


2025年9月12日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた49

「こっちはお金払って飲みに来ているんですよ?忙しいとか店員さんの都合は関係ないです。プロなら忘れちゃダメですよ」
 

2025年9月10日水曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた48

「そういえば……ドリンク来るの遅くないですか?」

Dさんが競艇や競輪好きという事実に驚き絶句していると、Dさんが訝しげにそう言った。その表情は、心なしか厳しく険しい。棘のある口調で同意を求めてくるDさんに、僕は嫌な予感がして心臓がひやりとした。
 

2025年9月8日月曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた47

Dさんの希望は、飲兵衛の街蒲田で飲み歩くということ。一つのお店に留まらずに、その場のノリで様々なお店を渡り歩きたいそうだ。そういうわけで最初に僕がDさんを案内したのは、蒲田では有名なもつ焼き屋さん。ここは蒲田では、絶対に外せないお店だ。
 

2025年9月5日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた46

「いいと思いますよ〜!男性のその、"頑張ってる感"!私そういうの、本当に大好物です!」
 
上から下まで全身をニヤニヤと眺めてくるDさんにそう言われた僕は、心の底から死にたくなっていた。 
 

2025年9月3日水曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた45

待ち合わせ時刻ぴったりに、改札機を通り抜けた女性が僕に向かって近づいてきた。おそらく、Dさんだ。彼女と会うのはこれが二回目なので、すぐにDさんだと断定できたわけではない。パッと見てもすぐには確信が持てず、しばしの間その女性を注視してしまった。しかし彼女のブランドバッグにぶら下がっていた某漫画のキャラのぬいぐるみを見て、Dさんだと理解した。
 

2025年9月1日月曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた44

そんなこんなで、あっという間にDさんと会う日になった。その間僕の気持ちは、ジェットコースター並みに情緒不安定だった。そもそも気が進まないのに会うことを承諾してしまったこと、Dさんに好感を持っていないのに"もしかしたらの奇跡"に縋っていること、性格が合わなくてもDさんの外見が綺麗だから会おうとしていること。そんな打算的で不誠実な自分に、後悔と罪悪感でいっぱいになってしまっていたのだ。自分でもおかしくなるくらい気分の浮き沈みが激しく、訳がわからない状態で当日を迎えた。