2025年9月5日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた46

「いいと思いますよ〜!男性のその、"頑張ってる感"!私そういうの、本当に大好物です!」
 
上から下まで全身をニヤニヤと眺めてくるDさんにそう言われた僕は、心の底から死にたくなっていた。 
 

確かにDさんに会う日に合わせて、身だしなみには神経を遣った。洋服を新調したり、美容室に行ったり、フェイシャルエステなどをした。間違いなくいつもより少しだけ意識して挑んだ。だけどその変化は、自分にしかわからない程度で、決して他人が気づくレベルではない。ましてや僕のことを全然知らない人、まだ二回しか会ったことのない他人に指摘されるほど、目に見えるような大きな変貌はないはずだ。
 
別に派手で目立つ服を着ているわけでもないし、ちょっとしたパーティーに行くような華やかな装いをしているわけでもないし、自爆するようなアクセサリーをつけているわけでもないし、厨二病丸出しの痛いアイテムを所持しているわけでもない。至って普通の、ただの40代男性の無難なファッションだ。
 
それなのに、"頑張ってる感""ってなんだろう。僕にはDさんが言う、"頑張ってる感"が、わからなかった。例え"頑張ってる感"が出ていたとしても、別に良くないか?わざわざ面白がって冷やかさなくてもいいじゃないか。Dさんは意地悪だと思う。それに"頑張ってない感"よりは、"頑張ってる感"の方がいい気がする。それとも、"頑張ってる感"が出ている僕といるのが恥ずかしいって言いたいのか?だったらそう言って、突き放してほしい。

「今日は蒲田で飲むので、私も一応気合を入れて戦闘服を着てきました。蒲田で飲むのは、結構ハードル高いんですよね。浮ついた気持ちで来たら怒られそうな印象っていうか。だから飲兵衛の街でも舐められないように、強気のファッションって感じにしました」

"飲兵衛の街でも舐められないように強気のファッション"って……。
 
僕の前を歩くDさんの洋服は、確かに彼女が言う通り、強気の攻め攻めモード。指にも耳にもキラキラしたアクセサリーが渋滞、胸元が大きく開いたトップス、タイトで身体のラインがわかりやすいスカート、ロゴが主張しまくりのブランドバック。ファッション誌からそのまま出てきたような、出立ちだ。多分Dさんは、きっとお洒落なのだろう。
 
しかしどちらかというと、蒲田で飲むには不向きすぎるファッション……だと思う。
 
僕の"頑張ってる感"を指摘する以前に、そういうお前の着ている服はどうなんだよ!と言いたくなった。特に胸元が大きく開いたトップスは、本当に勘弁して欲しかったし、お前今すぐTシャツに着替えてこいや!と切実に思った。そういう、肌が露骨に見えるような洋服は、本気で目のやり場に困る。それにあくまで僕はだが、いくら素敵な洋服だとしても、素肌が見えすぎると、途端にだらしないなと感じでしまうし、下品だし、破廉恥だ。
 
「……とても華やかなお洋服で、素敵ですね。ですが今から行く僕のおすすめのお店、お世辞にも綺麗とは言い難いんですが、大丈夫ですか?」
「全然大丈夫です!そういうつもりで来ましたから!」
 
そういうつもりって……本当にマジでどういうつもりだよ!
 
婚活パーティーでDさんに会った時は、仕事ができる女性という印象のファッションだった。大きなお世話だが、そちらの方がよっぽどDさんには似合っていると感じつつ、僕はお店に向かった。
 
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