「そういえば、ホピ沢さんに聞こうと思っていたんですけど。私が蒲田駅でぬいちゃん落とした時、連絡くれたじゃないですかあ。どうしてわざわざ品川駅まで、私を追いかけようと思ったんですか?返すのは、次回お会いした時でもよくないですか?」
……そこ、今更掘り下げるところだろうか。
「Dさんにとってすごく大事なぬいちゃんだと思いましたので、一刻も早くお返しした方がいいかなと……それで追いかけようと思いました。蒲田と品川は三駅ですから遠くないですし……」
「でも次回でもよくないですか?普通、次回返そうと思いませんか?」
「あ、でも、ぬい活をされている方にとって、ぬいちゃんは大事な相棒だと思ったので早い方がいいかなと思い……」
Dさんに説明をしながら、僕は嫌な予感がした。僕としてはDさんにぬいぐるみを早く返した方がいいと感じたため、蒲田駅から三駅離れている品川駅(Dさんが京浜東北線から山手線に乗り換えするため)に向かおうと思ったのだ。そして品川駅の山手線ホームでDさんに会い、ぬいぐるみを返す。ただ、それだけのこと。
三駅といっても都内の三駅、10分以内で着く距離だ。別に特に負担でもない。むしろ僕にとっては、自宅に他人の私物がいつまでもある方が負担なのだ。それにDさんは次回次回と言うが……次回なんてものはそもそも僕の選択肢にはなかった。だってDさんとは、二度と会う気がなかったのだから。
「ホピ沢さんのそのお気持ちは、すごく有り難かったんですけど。ちょっと品川駅まで来るって聞いた時は、びっくりしてしまって。あれなんか……なにこれ?的な感じで……」
"あれなんか……なにこれ?的な感じで "ってなんだよ!なにも、"なにこれ?的な感じ"なんかねーよ!
「ホピ沢からぬいぐるみを返したいと連絡が来た=ホピ沢はぬいぐるみにかこつけて私(Dさん)にまた会おうとしている=品川駅まで来ようとしていたことがキモい=下心が爆発しすぎ=超しつこい超ウザい=一度飲んだだけで調子乗んな勘違い野郎」
と思われていたらしい。
「驚かせてしまって、すみません。どうしても早くお返ししたかったので……」
言っておくが、Dさんに対して下心は一切ない。 ただ本当に、早くぬいぐるみを返したかっただけだ。それともう二度と、Dさんに会う気がなかった、というのもある。
しかしたった一つの判断で、気持ち悪がられてしまうのだなと反省した。僕としては、今すぐぬいぐるみを返そうという行動を示すべきだと思っていたが、それよりも次回に持ち越した方がよかったらしい。
「すみません、僕の行動でDさんを不安にさせてしまいましたね」
「いえ、全然!ていうか、追いかけるって言うから、てっきり私のことちょっと好きなのかなって思いましたよ。あ、冗談ですよ!あはは!」
……。
