Dさんを案内したお店は、蒲田駅から徒歩数分の串焼き屋さん。串焼きなので、焼き鳥やもつ焼きはもちろんのことだが、珍しいことに羊肉などジビエ系も食べられるお店だ。某グルメサイトでの評価も高いが、路地裏にひっそりとあるからなのか、何故かいつもすんなり入れる。Dさんと暖簾をくぐった時も例外ではなく、すぐに座れたため、Dさんは少し困惑していた。どうやら蒲田の飲み屋は、いつも飲兵衛で大混雑というイメージらしい。
「じゃあとりあえず、ホッピーの黒で。ホピ沢さんは?」
「僕も同じもので」
「これが今日、最初の水分になるんですよ。朝から何も飲んでなくて。あー早く飲みたい!」
……またそれかよ。前回もDさんは乾杯した直後に、「このビールが、今日初めて摂った水分なんですよ。はあー、うまっ」と言っていた。それが本当なのか、それともただの冗談なのか……そんなことはどうでもいい。ただ僕の脳裏にはずっと、先ほどDさんが、"あのデブの女"と罵っていたことがちらついている。だからなのか、Dさんの"お酒大好き発言"が、とても下品に聞こえてしまった。自分でも何故こんな気持ちになるのかわからないが、嫌悪感が募る一方だった。
「これ、お預かりしていたぬいちゃんです。ようやくお返しできてよかったです」
料理を注文後、僕は鞄からDさんのぬいぐるみを取り出し、Dさんに差し出した。Dさんは一瞬きょとんとした表情をしたが、すぐに「ああ……」と頷いた。その様子がどうしても、行方不明だったぬいぐるみとの再会を喜んでいる様には見えず、僕は不可解だった。何故Dさんは、ぬい活をしているのだろう。
「ありがとうございます。わー、可愛い袋。え、わざわざラッピング袋に入れてくださったんですか?」
「まあ、100均のですけど」
「ふうん、え、どうして一人暮らしの男性の家に、こんな可愛いラッピング袋があるんですかあ?まさか元カノに使って、余ったやつですか?」
「違いますよ。姪の誕生日プレゼントを包装した時に使ったもので……」
「えー?姪?なんか怪しいですね。私的には元カノのお下がりなのかなあって気がしています」
うるせーよ!姪の何が怪しいんだよ!つーか仮に元カノのお下がりでもお前には関係ねーだろ!
「袋からぬいちゃん出してあげなきゃ。ずっと袋の中にいたの?そうだよね、苦しかったね」
「……」
もうやだ!
