僕がDさんに、"ぬいぐるみを返したい"とラインをしてから3週間が経った。しかし、相変わらずDさんからは連絡はない。それどころか、ラインが既読にすらならないのだ。一体何故?もしかしてブロックされた……?
当初僕はDさんが既読をつけたかどうか頻繁にチェックしていたのだが、次第に馬鹿らしくなった。そして嫌でも悟る。 ああ、これは一生返事がこないやつだな……と。
つまり僕はDさんから、完全に拒絶されたのだ。大事なぬいぐるみを犠牲にしてまでも。
しかし、連絡ひとつ寄越さず、自分の忘れ物を他人に預けっぱなしにしているDさんに憤りを感じる反面、僕の気持ちは晴れていた。
Dさんに拒絶されたのだと理解した瞬間、あれだけざわついていた僕の心は途端に安寧を取り戻した。正直、ずっと負担だったのだ。ぬいぐるみを返すためにDさんにもう一度会わなければならないこと、Dさんのぬいぐるみを責任持って丁寧に扱わなければならないこと、Dさんに失礼なことを言われたらどうしよう……など、日々悩んでいたのだ。
だからDさんから音沙汰がないという事実は、僕を安心させた。Dさんに完全拒否されたことで傷つくところか、むしろ無傷。これで心を入れ替えて、次の婚活を頑張ろうと決意した。
しかし一つ、懸念があった。Dさんが僕を拒否した理由だ。それはDさんのみぞ知るわけだが、もしその理由が、
「ホピ沢からぬいぐるみを返したいと連絡が来た=ホピ沢はぬいぐるみにかこつけて私(Dさん)にまた会おうとしている=品川駅まで来ようとしていたことがキモい=下心が爆発しすぎ=超しつこい超ウザい=一度飲んだだけで調子乗んな勘違い野郎」
……だったら?
純粋にぬいぐるみを返したいという僕の気持ちを、下心だと深読みされていたら?
……不名誉だ。
まあもう会うこともないしそう思われてもいいか……そうDさんの存在を忘れかけていた時のことだった。
