2025年8月20日水曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた39

ピンヒールを一際大きくカツカツ鳴らして去っていったDさんを見送った後、僕は足早に改札を通り抜けて京浜東北線に乗った。吊革に掴まって窓の外を眺めながら、今日の婚活パーティーの出来事を思い返そうとして……やめた。色々と考えること、反省すべきこと、今後のことなど、振り返らなければならないことは当然いっぱいあった。だがとりあえず今は、新しい世界(婚活パーティー)に踏み出した自分を、とにかく褒めようと思った。初めてのパーティーで、カップリング成立。さらには初対面の女性と、お茶ではなく重めの食事とトーク。よく頑張ったなと思う。
 
 
だからといって特に自分を労うわけでもなく、僕は地元蒲田の隣駅、大森駅で降りた。駅から少々離れた衣料品店、ユニのクロに、ネットでオーダーした商品を受け取りに行くためだ。蒲田の駅ビルにも大森の駅ビルにもユニのクロはあるのだが、駅から少し離れた大森のユニのクロは、駅よりも店舗が広く品揃えがいい。そういうわけで、多少駅から離れた不便な場所にあっても、僕は結構利用している。
 
サービスカウンターでオーダーした商品を受け取った後、僕は店内をウロウロしていた。特に目的はなかったが、値下げ専用ワゴンに何か掘り出し物がないか、チェックしようと思ったのだ。ワゴンの商品に手を伸ばしたその時、僕はふと、僕の後ろを通り過ぎていったカップルに違和感を覚えた。そして、反射的に後ろを振り返った。

「ねえねえ、これ似合うと思うよ〜」
「マジで?試着してみよっかな」

取り立てて注目すべきところもない、衣料品店ではごく普通のやりとり。女性が男性に洋服を勧め、それを男性が気に入り試着を決意するシーン。でも僕は、そのカップルから目が離せなかった。
 
「サイズLで大丈夫?」
「当たり前っしょ!3XLのBとは違って、俺のサイズは店舗で取り扱いあんの!」
「もー!3XLとか大きな声で言わないでよ〜きゃはは」
 
だって、男性から"B"と呼ばれた女性が、先ほど婚活パーティーで話をした、気を抜けばすぐに体重が100kgの大台に乗ってしまう、肥満体型のBさんだったから。
 
なぜここにBさんが……?
 
考えるよりも先に体が動き、僕は物陰に隠れた。こっそりそのカップルを見つめながら、ああ、とすぐに納得した。そうだった。確かBさんは、大森出身で大森在住。生粋の大森民だ。このエリアに住んでいるというのだから、当然Bさんが大森のユニのクロにいても全然おかしくない。ただおかしいのは……

「こっちも似合いそうだよ」
「そう?じゃあ色違いで買うかな」
 
おい、B……。その隣にいる男性は誰、なんだよ……。
 
Bさんは細身の男性と腕を組みながら、大森のユニのクロを闊歩していたのだ。
 
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