結局、僕に"いいね"を押してくれた女性に"いいね"を押し返すまで、スタッフの方は僕の個室に居座っていた。そして僕が諦めて、愛想笑いのCさん、韓国好きのDさん、占い好きのEさんにも"いいね"を押し返したとわかると、満足そうに頷いて部屋から出ていった。
こんなことって……いいのか?
結果的に僕は、8人中5人の女性に "いいね"を押した。そのうち、本当に"いいね"と思った女性は2人。"いいね"と思っていないのに、"いいね"を押さざるを得なかったのは3人。こんな強制的な、 "いいね"があっていいのだろうか。いや、 "いいね"と思っていないのに"いいね"は、さすがに失礼だろう。それに何より、僕自身が一番、そんな "いいね"は嫌だと思っている。
だから僕は、スタッフの方が去ったら"いいね"を取り消ししようと思った……が、腹立たしい事にそれはできない仕組みになっていた。どうやら一度押してしまった "いいね"は、何があろうと取り消しさせないらしい。運営側はマッチングさせるためならなんでもするんだな……、と失望した。
もし、 "いいね"と思っていない女性と、マッチングしたらどうしよう……。
そんな状況が自分に巡ってくるわけがないのに、僕はいらぬ不安と心配を抱えていた。いやしかしその可能性は、無きにしも非ずなのだ。
ちなみに後からでも"いいね"を押せるにも関わらず、僕はAさんから"いいね"を押してもらえなかった。
おい、スタッフ!僕にしたのと同じようにAさんにも、「ホピ沢さんが"いいね"を押してくれてますよ、さあ、Aさんもホピ沢さんに押し返しましょう」って催促しろよ!してくれよ!
待てど暮らせどAさんから"いいね"を押してもらえず、改めてショックを受けている自分がいた。何故そこまでショックを受けているのかは、自分でもよくわからない。だがAさんは、どんなに猶予を与えられても僕のことは拒否なんだなと思うと、心がちくちくした。どうしてAさんに、受け入れられるとでも思ったのだろう。勘違いも甚だしい。"Aさんはワキガなんだから拒絶されてよかったじゃないか……"と、なんとか自身を鼓舞している情けない心境だった。
だが、そう落ち込んでいる暇もない。僕が次にやるべきことは、第一希望から第三希望の欄に、いいなと思った女性の番号を書かなければならないのだ。
第一希望には、気を抜けば100kg超えのBさん。第二希望には、無理だとわかっていても悪あがきのAさん。これは悩まずにすぐに書けた……というか、AさんとBさん以外の番号を書く気持ちになれないのが本音である。しかし空欄にすることはできないので、気が進まなくても第三希望の欄を埋めなければならない。
どうしよう……誰の番号を書けばいいのか。正直書きたくないが、"いいね"と思っていないのに"いいね"を押してしまった件もあるし、どうせ誰ともマッチングしないのだから、どなたの番号でもいいか。
失礼なことだが、そんな半ば投げやりな気持ちで、韓国好きの45歳Dさんの番号を書いた。CさんDさんEさんの中で、一番Dさんと話が進んだから、というのが理由だ。
……この判断が後々僕を悩ませるとは知らずに。
そうこうしていると最終結果ーーついにカップリング成立発表の時間になった。