「え、すごい。ドーナツが60分食べ放題ですって。ドーナツのビュッフェがあるなんて知りませんでした。2000円でお釣りの値段なら安いですね。もし挑戦したら何個食べられるかなあ。これって今からでもできるんでしょうか?」
お、おい……あすぴょん……?
「……えっと、ドーナツの食べ放題ですか?」
「はい!ドーナツの食べ放題って面白そうです。私はあまり食べられないので基本的に食べ放題は苦手なんですけど、ドーナツならいけそうだなあって」
「……そういえばyoutuber達がドーナツ食べ放題に挑戦している動画を観たことがありますが、確か事前予約制だったような気がします。あと実施している店舗が一部らしくて……」
あすぴょんさんに言われて、数年前に大食いyoutuber達がドーナツを頬張っている動画を観たことを思い出した。おそらく予約なしで食べ放題はできないはずだし、全ての店舗で開催しているわけではないはずだ。覚えている限りの情報を伝えると、あすぴょんさんは真剣な眼差しでスマホを眺め始めた。そして「ああー」と落胆したような声をあげた。
「残念!このお店ではビュッフェをやっていないそうです。ちょっとやってみたかったなあ。もし挑戦したらホピ沢さんは何個食べられると思いますか?」
「どうでしょう……5個くらいでしょうか。口直しのサラダとかあるともう少し食べられるかもしれませんが、ドーナツだけだとあまり食べられないかもしれません」
「私は甘いものが好きなので、10個くらいは食べられそうです。最近の話ではないですが、休みの日にお菓子感覚で菓子パンを食べていたら、気がつくと13個食べていたこともあるんです。だから最低でも10個はいけそうです」
婚活のデートでドーナツビュッフェ……か……。僕はこの店舗がビュッフェを実施していないことに感謝しながら、ホットコーヒーを啜った。 食べることもドーナツも大好きだが、婚活中に60分間ドーナツを無我夢中で詰め込むのはなかなかヘビーだなと思った。そして例え冗談だったとしても、この状況で食べ放題を仄めかしてくるあすぴょんさんの思考が全くわからない。
「あの、あすぴょんさん。あすぴょんさんは以前、埼玉県から出ることを考えていないとおっしゃっていましたが……」
まだ込み入った話をするには場が温まっていないが、そんなことは気にせずに、僕はあすぴょんさんにとある質問を切り出してみた。