「これ、私のお気に入りなんですけど……可愛いですよね。よく一緒にお出かけとかしてるんです。いろんな景色とか、いろんなご飯を、一緒に見たり食べたりしてるんですよ」
ムラマツさんは、なんか小さくてかわいいやつのメンバーの一人、ハチのワレのぬいぐるみを取り出した。そして当然のように、そのぬいぐるみに、高速道路の景色を見せていた。
「楽しそうでいいですね。誰かと一緒だと出かけるのが嬉しくなりますよね……」
無難な返答をしておいたが、内心僕はトラウマで震えていた。
ムラマツさんのぬい活を否定するつもりはなく、むしろ、好きなことがあるのはいいことだと思う。それに堂々と好きだと公言することも。それについては全く否定的な気持ちはない。
しかし婚活パーティーで出会い、なんやかんやあったDさんとは、ぬいぐるみの件で、ちょっとしたトラブルがあった。彼女が落としたぬいぐるみを拾ったり、何故か返したはずのぬいぐるみが鞄に入っていたり……。要は僕は、ぬい活には抵抗があるのだ。
だが、なんか小さくてかわいいやつのことが好きな僕の姪が、うさぎのぬいぐるみを持ち歩いているのを知っている。つい最近、僕の家に遊びにきた姪が、棚の上に飾ってある、ピッコロさんのフィギュアと、うさぎのツーショット写真を撮って楽しんでいた。ぬい活に理解がないわけでは、ない。
「そうなんですよ!私インドアだったんですけど、この子たちと出かけるようになってから、すごくアクティブになって!毎週それを楽しみに、お仕事頑張ってる的な感じで」
「そうなんですね。楽しみがあると頑張れますもんね」
「はい、ホピ沢さんは……あ、時間になっちゃった」
ここで5分の自己紹介タイムが終わり、移動の時間となった。
「ホピ沢さんとまたお話したいです。ぜひ!」
社交辞令だろうか。とはいえ、こちらが話しかけても無反応なヒダカさんよりは、話しやすくて好感を持った。
しかし、いくらぬい活が楽しいからとはいえ、自己紹介タイム中にぬいぐるみを見せつけるのはどうなのだろうか。
