どうしよう。僕の身に、ただならぬ事態が起ころうとしている気がした。
「え……なんでDさんのぬいぐるみが……?」
一体どういうことなのだろうか。信じられないことに、僕の鞄の中には、Dさんに返したはずのぬいぐるみが入っていたのだ。
「返したはずだよな?うん、絶対返した。会ってすぐに返した。絶対返した」
混乱のあまり、僕は己に言い聞かせるように、何度も「返した。絶対返した」と繰り返していた。 何故得体の知れないぬいぐるみが、僕の鞄の中にしれっ我が物顔でいるのか。
ぬい活をしている方は気分を害するかも知れないが、あえて正直な気持ちを書く。いくらぬいぐるみが愛らしい表情をしていようと、他人のぬいぐるみが僕の許可なく鞄に入っていたことが、どうしてもどうしても気持ちが悪くて仕方なかった。
どうしよう……どうすんだこれ……。
Dさんはぬいぐるみがないことに、気づいただろうか。一番ベストなのは、Dさんから連絡があることだ。「ぬいぐるみを返してほしい」だの「捨てて構わない」だの、ぬいぐるみの飼い主として、ぬいぐるみの行く末を導いてほしい。そして僕にも、どうするべきか教えてほしい。
だがなんとなく、Dさんから連絡は来ないだろうと感じていた。プライドが高く勝気なDさんのことだ。貴重品ならまだしも、たかがぬいぐるみのために、"恋愛を一から教えてやると言ったのに、頑なに交際を断り自分に恥をかかせたホピ沢"に、自ら連絡することはしないだろう。僕もDさんの立場なら……しないと思う。二度と関わりたくない人に連絡を取る勇気は、なかなか出ない。
しかし一番の懸念は、Dさんに、僕がぬいぐるみを盗んだと思われることだ。自身のために言っておくが、断じて僕は、Dさんのぬいぐるみを盗んでいない。とはいえ、このまま連絡をせずにいたら、例えそんなつもりがなくとも、僕がDさんのぬいぐるみを盗んだことになるのではないだろうか。それだけは、何としてでも避けたい。
そもそもどうして僕の鞄に、ぬいぐるみが入ってんだよ!おい、D!お前マジでいい加減にしろよ!ぬいぐるみの管理ができないのなら、ぬい活するなよ!
