2026年3月6日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた98

「帰ります。当然お会計は、よろしくお願いしますね」 
 

そう吐き捨て、Dさんはハイヒールをこれ見よがしに鳴らしながら、お店を出て行った。 まるで捨て台詞だ。これほど激情に駆られて、お店を飛び出していく大人の女性を目の当たりにするなんて、そうそうない出来事だと思う。しばし呆気に取られつつ、僕は卓上に残された伝票を見つめた。そして、思う。当然お会計はよろしく……?その、"当然"ってなんだよ!平然と"当然"って言い切れるお前は、マジでなんなんだよ!
 
「すごい人だったな……」
 
お会計を終えて家路に着きながら、僕は無意識に独り言を言っていた。 すごいというか、強烈というか、何というか。僕とは真逆の、パワフルで人間味に溢れている方は確かに魅力的だと思うが、それにしても我が強すぎると思う。自分のことを棚に上げて相手を批評するのはダメだが、Dさんは己の意志を頑なに曲げないし、会話に勝ち負けを持ってくるし、何せ僕の話を遮って自分語りをする。承認欲求が強すぎるというのだろうか。とめどなく自分の話ばかりする人とは、相容れないなと感じた。
 
色々思うところはあるが、極め付けはやはり、"恋愛ど素人のお前に一から恋愛を教えてやっから、とりあえず私と付き合いな"……だろう。
 
もしDさんと付き合っていたら……今頃僕はどうなっていただろうか。 
 
そんなことを考えながら、僕は肩の荷が降りたことにホッとしていた。解放された気分で最寄りのスーパーで買い物をし、帰宅。購入品を整理したり、鞄の中身を取り出していたりしていると、ふと手の感触に違和感を感じた。
 
なんだこれ……?
 
僕の鞄には、ハンカチティッシュ財布エコバッグくらいしか入っていない。しかし鞄の中を弄ると、それらとは別の、全く馴染みのない見知らぬ感触を覚えた。 固いような、ふわふわしたような、片手で収まるサイズの……なにか。
 
嫌な予感しかなかった。恐る恐る鞄の中身を見て、僕はその場に崩れ落ちた。 
 
なんと僕の鞄の中には、Dさんに返したはずのぬいぐるみが入っていたのだ。 
 
 にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ