どうしても、不思議で仕方ない。どうしてDさんに返したはずのぬいぐるみが、僕の鞄の中に入っていたのだろうか。 あの時確かに僕は、簡素だが袋でラッピングしたぬいぐるみを、Dさんに手渡したのだ。Dさんはぬいぐるみに「苦しかったね」と言いながら、袋から取り出した。そしてDさんは居酒屋の料理withぬいぐるみの写真を取った後、彼女の鞄にしまったはず……。僕の鞄は会計の時に財布を取り出す以外、開けていないはず……。ちなみにDさんは僕を置いて先に店を出て行ったから、会計時に僕の鞄にぬいぐるみが入るシチュエーションはないはず……。
一体……なぜ?
不可解な点が山ほどあるが、考えても仕方ない。腹を括った僕は、Dさんに連絡をした。本当は連絡したくなかったし、さっさと処分したかったが、他人のぬいぐるみの処遇は持ち主ではない僕には決められない。それにDさんに、ぬいぐるの盗人だと思われることが嫌だったのだ(思うかどうかはわからないが)。
とりあえずDさんに連絡はする。Dさんから連絡が来ても来なくても、それはどちらでも構わない。大事なのは、「ぬいぐるみを預かっている。返したい」という意志を伝えたかどうかだ。
「Dさん、こんにちは。先日はお世話になりました。突然申し訳ありませんが、お伝えしたいことがあり、ご連絡を致しました。実は先日Dさんにお返ししたはずのぬいちゃんのことなのですが、現在僕の自宅で保護しています。お返ししたつもりだったのですが、僕の不手際でお返しできていなかったのかもしれません。申し訳ありません。お忙しいところ申し訳ありませんが、お返ししたいと思いますので、ご連絡をお待ちしております」
絶対自分の不手際じゃない、だって確かに僕は返した。 そう思ったが、喧嘩腰でメッセージを書いても仕方ないので、当たり障りのない文面にした。とはいえDさんからは、返事は来ないだろう。悪いがお前の行く末は近所のお寺だよ(ぬいぐるみ供養)……そうぬいぐるみに言い聞かせていた矢先、まさかのDさんから連絡が来た。
「連絡ありがとうございます。では、私の会社の受付に預けてもらえませんか?私の勤め先、知ってますよね?確か言いましたよね?私たちが出会った婚活パーティーの会場に近いので、わかりやすいと思います」
