「私たち、婚活パーティーで出会ったんですから、お互いを審査するのは当然じゃないですか?名誉挽回してくれないと、次回に響きますよ?」 「あの……Dさん。正直にお話しさせてください」
次回……?次回なんかねーよ!
審査……嫌な言葉だ。確かに僕とDさんは"婚活"という目的で出会ったので、当然お互いを、"結婚相手としてどうか"と見極めることは必要ではある。僕だってDさんを、審査している。しかし、いざ面と向かって"審査する"と口にされると、あまり気分のいいものではなかった。
それに、Dさんは審査とか名誉挽回などと言うが、僕にはDさんが何を考えているのか、全くわからないのだ。一体何のために、僕に名誉挽回を求めているのか。Dさんは僕と、どうこうなりたいのだろうか。とてもそうとは思えなかった。
第一に、この二回目の会合に至るまでの過程が、謎すぎる。おそらく僕がぬいぐるみを返す流れを作らなければ、Dさんと会うことはなかっただろう。もし本当に僕との"二回目"を考えていたのなら、彼女から何かしらのアクションがあったはずだ。ちなみにDさんからのアクションは……なかった。そもそもDさんは、僕のラインをしばらく既読無視していたのだから。
既読無視……もし僕にもう一度会いたいと思っていたのなら、そんなことはしないだろう。それにぬいぐるみを返すまでに、2ヶ月もの時間がかかっている。これら一連の出来事から、到底Dさんが僕とどうこうなりたいとか、僕のことをもっと知りたいと思っているとか、感じられないし、考えられなかった。次回ってなんなんだよ!
僕は思い切って、胸の内を話すことにした。 Dさんに今更どう思われようと、激怒されようと、どうでもよかったのだ。
「今日Dさんにお会いしたのは、婚活どうこうではなく、あくまでぬいぐるみをお返しするという目的でした。前回Dさんにお会いしてから、随分と時間が経ちました。その間僕が、"ぬいぐるみをお返したい"と連絡を差し上げても、Dさんからは連絡を頂けませんでした。ですから僕は、連絡がないと言うことは、Dさんとご縁がなかったのだと判断しました。なので、次の婚活をしようと気持ちを切り替えました」
「しかしその矢先、忘れた頃にDさんから連絡を頂きました。既にもう大分時間が経っておりましたので、どうして今更……と困惑したというのが正直な気持ちです。そして今、"名誉挽回してくれないと、次回に響きますよ"と言われ、ますます困惑しています。僕と連絡を断ったのは、僕のことを婚活相手としては考えられないと判断されたからだと思います。にも拘らず次回とは、一体どういうことなんでしょうか……」
正直すぎただろうか。嘘偽りない気持ちをDさんに晒す傍らで、僕は、僕が結婚できない理由を、なんとなく理解した。こういう疑問は相手に対して明らかにすべきではなく、心にとどめておくのが正解なのだろう。特に女性に対しては。自分のこの言動に、全て"結婚できない理由"詰まっている気がした。
「……ホピ沢さん、ぶっ込んできましたねえ〜」
Dさんはグラスを空にし、少し間を置いた後、 冗談めかした口調でこう言った。この時のDさんの気持ちはわからない。怒りや苛立ちを隠すために、あえておちゃらけた雰囲気を作ったのかもしれない。
「じゃあ私も正直に話しますね。そうです、ホピ沢さんの言う通りですよ。一回目に会った後、"ホピ沢ないなあっ"て思いました」
