"そうですか。別に特にぬいちゃんは急ぎではないので、一刻も早く返さなくても大丈夫です。ではホピ沢さんがお茶ができる時に、お会いしましょう。忙しくない日はいつですか?"
どうしよう……僕はその場凌ぎの嘘で乗り切ろうとしたことを、ひどく後悔した。
自分の愚かさが悔やまれる。"忙しい"を無駄にアピールして、 Dさんとの飲み会を回避しようと目論んでいたが、結果は撃沈。「忙しくない日に会いましょう」と言われてしまった。
困った。困ったけど、Dさんの「別に特にぬいちゃんは急ぎではないので、一刻も早く返さなくても大丈夫です」 にも驚愕した。確かにDさんは自身のぬいぐるみを他人に預けっぱなし、長期間どこかに放置していても平気な精神なんだろうと薄々感じてはいたが……信じられない。Dさんは、本当に心からぬい活をしていたのだろうか。ぬい活の風上にも置けないと思う。
そうこう悩んでいた矢先、実家で慌ただしい出来事があった。仕事も忙しい上に、その問題を対処することに奔走していたので、僕はDさんに返答することをすっかり忘れてしまっていた。あっ、と思い出したのは、ようやく事が片付いた時。
"Dさん、お返事が遅くなって申し訳ありません。実家で色々ありまして、すっかりお返事が遅くなってしまいました。本当に申し訳ありません"
既に10日ほど経過していたこともあり、なんとなく返事をするのが億劫だったが、忘れたのは僕のミス。返事が遅くなってしまった理由と謝罪をしっかり綴って、Dさんにラインした。
"大丈夫です。それで蒲田飲みはいつにしますか?"
Dさんの返答は至ってシンプルだった。もうこれは……第二回蒲田飲み大作戦から逃れらない流れになってしまった。
