"Dさん、お久しぶりです。お元気ですか。お返事ありがとうございます。お預かりしていたぬいちゃんは、責任持って保護させていただきました。しかし僕では力不足で、ぬいちゃんはとても寂しそうでした。ぜひお返しさせていただきたいと思います"
この上記の文、僕がDさんに送ったラインだ。僕的には気を遣って文章を考え書いたつもりだし、ぬいぐるみも手厚く保護したつもりだった。何度確認しても、この文にはDさんの気分を害する言葉は使用していないはずだ。要はぬいぐるみを保護した日から今日まで、Dさんに対して最大限に配慮してきたと強く主張したい。
それなのにDさんから来たラインの返事は……不満気だった。
"ぬいちゃん、寂しそうだったんですか?そう感じたのなら、もう少しぬいちゃんを気にかけてあげてくださいよ!ホピ沢さん、意外と冷たいんですね"
D……お前正気か?
僕は怒りを通り越して呆れていた。
おい、D!お前マジでなんなんだよ!お前がさっさと迎えに来ないから寂しそうなんだろ!なんで迎えに来ないんだよ!つーか僕にどうして欲しいんだよ!まさかお前のぬいぐるみを連れてどこかに行けとでも?話題のお出かけスポットやスイーツと一緒に写真を撮れとでも?ふざけんなよ!そんなんするわけねーよ!したくねーよ!そもそも他人の持ち物をどうこうしたくねーよ!
何か参考になればと思い、SNSでぬい活をしている方々を検索してみた。大半の方は思い思いにぬい活を楽しんでいて、すごく微笑ましい。周囲を怖がらせてしまうので実行はしないが、恥ずかしながら僕も、ドラゴンのボールのキャラ達とやってみたいなと興味を駆られた。
ふと、"ぬいぐるみをどこかに紛失してしまったので、見かけたら教えてください"という捜索願いのポストを見かけた。 それを眺めていると、関連に捜索願いのポストがずらっと表示された。ほとんどの方は"お手数おかけしますが、見つけたらご連絡をお願いします"という常識的な文章。
だが一部怪しげな投稿を発見した。"見つけたら手厚く保護して欲しいです"、"迎えに行くまでぬいちゃんに、たくさん景色を見せてあげてください"など、思わず首を傾げてしまうお願いが書かれてあった。ぞっとしてそっとスマホを閉じたが、Dさんと同じ感覚を持つ方がまあまあいるんだなと感じた。
"ぬいちゃんを気にかけてあげられず、ごめんなさい。ところでぬいちゃんをお返ししたいのですが、ご都合つきますか?"
内心イラッとしていたが、Dさんを刺激したくないので、当たり障りのない返事をした。なんで僕はこんなにDさんに気を遣っているのだろう。本当に馬鹿馬鹿しい。
"今月だとX日と△日と□日なら大丈夫です!また蒲田飲みします?ぜひしましょう!"
しねーよ!
