Dさんのぬいぐるみを保護してから一週間が経っても、彼女からは一向に連絡がなかった。
ぬい活している人にとって、ぬいぐるみはきっと大事な存在。もしぬいぐるみが行方不明になってしまったら、おそらく身を切られる思いをするはずだ。そしてぬいぐるみの在処がわかったら、一刻も早く迎えに行くはず。
……にも拘らず、Dさんからまるで音沙汰無かった。何故だ?色々な事情があるのかもしれない。出張?旅行?体調不良?家族や親戚に不幸?だとしても、連絡の一つぐらいはするだろう、できるだろう。得体の知れない中年男性(僕)に、一週間も大事なぬいぐるみ預けっぱなしのまま平然といられるDさんが、僕は信じられなかった。
これってもしや……僕からDさんに連絡をしなければならないのか……?
確かに最後のラインはDさんの、"次回お会いする時まで、ぬいちゃんのことよろしくお願いします" という文章で終わっている。これに対して僕は、あえて返事をしなかった。あの時の僕は苛立っていて、返事をする気が失せてしまっていたのだ。後で返そうと思ったりもしたが、そもそも何故僕が……という頑固な気持ちの方が強く、どうしても自分から連絡するのが嫌だった。お恥ずかしい限りだが、子供じみた意地を張っていた。
今にして思えば、僕が不誠実な対応をしてしまったのかもしれない。苛立ちをぐっと堪えて、せめて"わかりました"の一言でも返すべきだったのかもしれない。もしくはスタンプの一つでも。 一言でも返事をするべきだった。
じゃあ今からするか……?今更……?
いやでも、ぬいぐるみは返さないといけない。だが普通はやっぱりDさんから連絡してくるべきだ。何故僕からしないといけないんだ……?だけどもしDさんが僕からの返事をずっと待っていたら……?
散々悩んだ僕は……渋々自分からDさんに連絡をした。
