"これから友達に会うことになってしまったので、ぬいちゃんは次回でもいいですか?"
次回……?次回ってなんだ……?
ラインの文面を見た僕は、しばしの間フリーズしてしまった。次回……?これから友達に会う……?Dさんの言っている意味がよくわからず、かといって疲弊した思考では瞬時に意味を探ることもできず、僕はスマホを持ったまま改札手前の壁際で立ち尽くしていた。
"ホピ沢さんに返事しようと思ったんですが、友達のラインと重なってしまったのと、品川で乗り換えに手間取っていたら発車してしまいました"
"すみません、もう品川から離れてしまいました"
"ホピ沢さんに来てもらうのはご迷惑ですし、これから友達に会うことになったので、次回の時にぬいちゃんを返してもらってもいいですか?"
"その時までぬいちゃんのこと、よろしくお願いします"
ぼうっと突っ立っていたら、立て続けにDさんから連絡があった。文章を読み終えた僕は、眩暈がする思いだった。決してお酒のせいではない。Dさんの返信の内容にだ。
おい、D!品川で乗り換えなんだから、ホームで待ってられただろ!ぬいぐるみよりも、友達優先かよ!まずは友達に返事するよりも、僕にするだろ!つーか乗り換えに手間取ったってなんだよ!山手線だろ?ただ京浜東北線の向かいのホームにきた電車に乗るだけだろ!全然手間取んねーよ!
Dさんにとっての優先順位が謎だった。僕が連絡した時に、例えば既にDさんは蒲田から随分離れた駅にいたとかなら、"次回お願いします"という返事はわかる。でもDさんから返事がきた時、Dさんはちょうど蒲田から一駅離れた大森にいた。大森の二駅先が、品川だ。
Dさんが乗り換えで降りる品川。別に蒲田に戻ってこいと言ったわけではない。僕が品川に行くから、降りた先のホームで待っててほしいと言っただけだ。品川は蒲田から三駅、ホームで待ち合わせなんて全然可能のはずなのに。
もう、なんなんだよ!D!!!
友達でもなんでもない相手に、自身の忘れ物を預けっぱなしにできる神経が理解できなかった。ぬい活している人にとって、ぬいぐるみは大事な物じゃねーのかよ!一刻も早く手元に連れ戻したくねーのかよ!それを預けっぱなしって、マジでどういうつもりなんだよ!
僕はなんとも言えない気持ちで家に帰った。
このぬいぐるみ……どうしよう……。
