「私とホピ沢さんだったら、どこに住むのがベストだと思いますか?」
……何言ってんだ?
「……」
「ホピ沢さんの職場はどこでしたっけ?私の職場から近いですか?」
「……電車で30分くらいだと思います」
「そうですか。で、私とホピ沢さんが一緒に住むなら、どこに住むのがベストだと思いますか?」
……なんでそういう返答に困る難しい質問してくるんだろう。
大真面目に回答すると、蒲田は候補の一つだと思う。決して蒲田がベストと言っているわけではない。ただDさんの職場の最寄駅には、蒲田から乗り換えなしで行けるのだ。ちなみにDさんの住む下北沢駅からDさんの職場に通うには……乗り換えを2回しなければならない。
ただここで「蒲田駅がいいです」とは言えない。それを言ってしまうと、「蒲田に住むことを彼女に強要しないって言っておきながら、結局ホピ沢さんは蒲田から引っ越せないんじゃないですか」というオチになってしまう。
「……便利なエリアがいいですよね。XX線やYY線の沿線はどうですか?例えば△△駅や■■駅など」
XX線やYY線は、Dさんの職場に乗り換えなしで行ける沿線だ。特に例に挙げた△△駅や■■駅は、誰もが知っている東京を代表する駅の一つ。正直△△駅や■■駅は便利である反面、生活することを考えると……環境的にも金銭的にも現実的ではないエリアである。実際に住んでいる方はいらっしゃるが、その方達は一体どうやって生活しているのか不思議に思う。
だが僕は、そういう誰もが知っている有名どころの駅を挙げて、無難な回答で乗り切ることにした。だいたい僕とDさんにとってベストなエリア?そんなん知らねーよ!って感じだ。とにかくここはふわっとした感じの会話で乗り切って、次の話題に移してそのまま帰りたい。
しかし……Dさんの反応は僕の予想とは全く違うものだった。
「……△△駅や■■駅?」
「ええ、便利ですし……」
「ホピ沢さん、本当に生活する気あります?そんな△△駅や■■駅なんて、無理に決まってるじゃないですか。家賃を払うだけでいっぱいいっぱいになっちゃいますよ」
「……」
「これだから東京生まれ東京育ちの人は!本当の意味で東京で暮らすってことをわかってないんだから!」
「……」
「私だったら、東京を出て千葉県に行きますね。東京よりは家賃も低そうだし。私もホピ沢さんも職場に通いやすいですしね。ホピ沢さんの方が通勤時間が短いので、家事してもらえそうですし」
……知らねーよ!
