2025年10月24日金曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた61

蒲田の名物、羽付き餃子がテーブルに到着した途端、Dさんは何故か驚いた表情を見せた。そしてまじまじと羽付き餃子を眺め、怪訝そうにこう言ったのだ。

「え……これが羽付き餃子……ですか……?」
 

「そうです。これが羽付き餃子ですけど……」
 
蒲田生まれ蒲田育ちの僕は、幼い頃からこの蒲田の羽付き餃子を見慣れている。所謂パリパリでパンチの効いた日本の王道の餃子とは少し違うが、餃子全体が大きな羽で覆われていること以外、見た目は餃子に変わりはない。まさしく、餃子だ。だからDさんが一向に箸を持たずに、不思議そうに羽付き餃子を見つめている様子が、どうしても理解できなかった。

「日本の餃子とは少し違いますが、美味しいですよ。中国の焼き肉饅頭をヒントに作られた餃子だそうです。ぜひ召し上がってみてください」
「あ、はい……。なんか思った以上に大きくて、びっくりしました。スナック感覚で食べられる餃子ではなくて、食事って感じの餃子なんですね。中国の餃子って感じ」
「そうですね。なかなか食べ応えがある餃子です」

僕がDさんに餃子を勧めると、Dさんはようやく卓上の調味料を小皿に入れて餃子のタレを作った。そして躊躇う素振りを見せること数秒、恐る恐る羽付き餃子を箸で持ち、口に運んだ。

「……うーん、なるほどなるほど。羽付き餃子ってこんな感じなんですね。確かに肉汁はすごいですね」
「噛むと肉汁が飛び出すくらい溢れますよね。それがすごく美味しくて……」
「でもあんまりパリパリしてないんですね。もちもちっていうか、ねちょって感じの食感なんだー……焼いているはずなのに、水餃子みたい
「……」
「餡の味も薄いですね。ニンニクや生姜が全然入ってない感じ?」
「……」
「本当にこの餃子が蒲田では人気なんですか?お店の前にたくさんの人が並んでるのが不思議。ホピ沢さんは美味しいと思ってるんですか?」
 
食の好みは人それぞれなので、例え人気店の餃子だからといえ、必ずしもDさんの口に合うわけではない。だからDさんの素直な感想を否定するつもりはない。が、Dさんが行きたいと言ったから羽付き餃子のお店に案内したのに、この言い様はさすがに失礼だと思う。自分の心の中で本音は留めておこうという選択肢はないのだろうか。美味しくないと感じているのに美味しいと嘘をつく必要はないが、ここまで曝け出さなくてもいいじゃないか。口コミを書いているわけでもあるまいし!
 
結局僕はDさんの感想に何も言えず、黙々と餃子を食べた。Dさんは無表情で餃子を口に運び、その間も「うーん。何でこの餃子が人気?」とブツブツ言っていた。そして食べ終わると、またDさんは例の如くお会計前に席を立った。
 
「お手洗いに行ってきますので、お会計お願いしますね」 

ちなみにこのお店のお手洗いは客席から見える位置にはない。だからDさんが手を洗ったか洗ってないかは……わからなかった。
 
 にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ