「日本にも犬鍋が食べられるところあるみたいですよ」
……おい、D!お前一体どういうつもりで、その話を犬好きの僕に言ってんだ?
日本以外の一部の国には、犬食文化がある。それは知っているし、外国の犬食文化を否定するつもりもないし、Dさんのように興味本位で犬を食する人を拒絶するつもりもない。だが今さっき犬好きと公言した僕の前で、普通その話題をするだろうか。なかなかヘビーだ。僕は言いようのない嫌悪感で、心がモヤッとした。例え、「牛豚鶏はいいのに犬はダメなのか」、と突っ込まれようと、犬は……絶対にダメだ。
「韓国ドラマを観て韓国に行ったとおっしゃっていましたが、Dさんは海外旅行はお好きなんですか?」
これ以上犬食の話をしたくなかった僕は、話題を変えて質問してみた。これまでのDさんの会話内容から、海外旅行好きだと感じたのだ。この話題なら、僕もそれなりに引き出しがある。海外旅行は好きだし、仕事でイギリスに数年住んでいたからだ。
「好きですよ。行くのはアジアばっかりですけど、一年に一回は必ず行きます。本当はヨーロッパに行きたいんですけど、長期のお休みを取るのが難しくて」
「へえー、特におすすめの国はありますか?」
「どこもおすすめですけど、中国と香港と韓国かなあ。私は食べることが好きなので、グルメ重視なんですよ。特に中国料理は、発見ばかりです。毎回毎回知らない料理に出会えます」
そうこうしていると、羽付き餃子がテーブルに到着した。するとDさんはまじまじと羽付き餃子を眺め、怪訝そうに首を傾げた。
「え……これが羽付き餃子……ですか……?」