「ホピ沢さんと結婚したら、毎日家事してもらえそう」
実はこう言われるのは、Dさんが初めてではない。 過去に交際した元恋人達からも、職場の女性社員からも、婚活をして出会った女性からも、言われたことがある。彼女達が一体どういうきっかけで、僕に対して"毎日家事してもらえそう"と思うのかは不明だが、褒め言葉ではないのは明らか。だからそう言われる度に複雑だ。もし僕がDさんに「Dさんと結婚したら、毎日家事してもらえそう」と言ったらどうなるのだろう。"男女差別だ"とか、"女性が家事するのが当たり前だと思うなよ"などと、非難されそうだなと感じた。
「ホピ沢さんは、結構細かい性格な感じがします。例えば、なんだろう。冷蔵庫の中身は全部把握していて、いつも綺麗で整頓されているイメージです」
「整頓されているかはわからないですけど、物は少ないかもしれませんね。冷蔵庫にたくさん食材が入っていると、食べなきゃならないプレッシャーに駆られるので、食べ切れる量や必要なものだけ入っています」
「あー、そういうとこですね。私の冷蔵庫はごちゃごちゃしているので、ホピ沢さんが見たらは発狂するかも。やっぱ家事はホピ沢さん担当かなあ」
「ははは……」
こういう場合、どういう反応するのが正解なのだろう。Dさんは冗談で、"やっぱ家事はホピ沢さん担当かなあ"と言っているとわかっていても、どう返答するべきかわからない。とりあえず僕は小さく笑って軽く流した。が、Dさんはその後も、"やっぱ家事はホピ沢さん担当かなあ"と繰り返すので、僕は本当に困ってしまった。
「元カノさんにお弁当を作ってあげたことないんですか?私は作ってあげたことも、作ってもらったこともないんですけど。一応作ってあげようかなって思ったことはありますよ?でもお弁当って難しくないですか?家庭の味って違いますし」
「そうですね……お花見をしたときに作ったことはありますけど、確かに結構緊張しましたね。手作りを振る舞うのは難しいですね」
「そうそう。随分昔の元彼に、家でおつまみを作ってあげたことがあるんですけど、しょっぱいって言われたんですよね。それから他人に料理するのが嫌になりました」
「確かに嫌になりますね。わかります」
「ですからホピ沢さん、家事全般はお願いしますね!」
だからなんでだよ!なんなんだよ!