ここで改めて、Dさんのプロフィールを紹介させていただく。東北出身のDさんは、45歳の会社員。大学進学を機に上京、卒業と同時に新卒で入社した会社に、今もずっと勤めているそうだ。身長は160センチほど。体型維持とストレス解消のために、ジムやピラティス、暗闇キックボクシングなどに通っているそうだ。また、仕事の付き合いで入会したゴルフスクールにも、週一回のペースで行っているらしい。年に数回は、ゴルフ場でプレーしているそうだ。アクティブなライフスタイルを送っている女性だと思う。
Dさんは、目鼻立ちがはっきりとしていて、華やかな印象を与える顔立ちだ。要は、美人。茶髪のミディアムショートヘアが、とてもよく似合っていた。お会いした日のDさんはワンピース姿だったが、彼女のはつらつとした雰囲気から、スカートよりもパンツスーツが似合いそうだと思った。まさに、仕事がバリバリできる女性のイメージを、そのまま体現したような外見だ。
「趣味はお酒〜っていうのもアレなので、習い事にはあれこれ手を出しました。まあ独身女性は、だいたい仕事終わりに習い事してますよね。意識高いとか自分磨きってわけじゃないんですけど、結局1人なので暇なんですよ。ホピ沢さんは何かされてますか?」
「週一回ですけど、ジムのプールで泳いでます。あとは気分転換に、近所をジョギングしています」
「えー?プールとジョギング?全部自分自身と孤独に戦う系じゃないですか。私は団体というか、誰か仲間がいないと運動できないタイプなので、そういうの無理無理!ホピ沢さんって実はストイック?」
「……ストイックではないですけど、1人で黙々と運動する方が落ち着きますね。あとは陸上部だったので、走ることが好きなんです」
「ふーん。でも孤独に戦う系タイプなのに、なんで筋トレしないんですか?筋トレこそ、自分の敵は自分自身、孤独な俺、みたいな感じじゃないですか。ジム行ってるんですよね?もしかして筋トレエリアは怖いと思ってます?私はそういうの気にしないで、男性に混じって、ガンガン筋トレやっちゃいますけど」
「ははは……」
おい、D!確かに僕はムキムキのマッチョでも、細マッチョでもないけど!確かに筋肉トレーニーが占領している筋トレエリア行くのは怖いけども!頭ごなしに僕が筋トレしてないって決めつけんなや!一応これでも少しはやってんだよ!少しは!
「あ。そうだ。そういえばホピ沢さんってどこに住んでるんですか?」
あ、まずい。Dさんからそう尋ねられた瞬間、僕は自身の表情が強張っていくのを感じた。この質問を受けるたびに、僕はいつも苦しくなるのだ。 既に何度も申しているので説明は避けるが、大袈裟に揶揄するような報道したメディアや、誰かが勝手に名付けたせいで、僕が住む蒲田は、"東京のスラム街"と呼ばれるようになってしまった。その影響で、蒲田に住んでいることを公表すると、露骨に嫌な顔をされたり、失礼な言葉を言われたりするのだ。慣れているとはいえ、自分の住んでいる街を貶されるのは、やはり腹が立つ。
「か……蒲田です……」
「えー!蒲田ー?」
Dさんが手を叩きながら笑った。何がおかしいのだろう。僕は何を言われてもいいように、心の準備をした。だが……
「超羨ましい!飲兵衛の街じゃないですか!」
Dさんの反応は、僕の想像とは逆のものだった。
