「Bさんの趣味はグルメ巡りだそうですが、どういったお店に行かれるんですか？僕もグルメ巡りが好きなんですが、ついいつも似たり寄ったりのお店を選んでしまいます。あまり新しいジャンルのお店に行けていないので、新規開拓したいなと思ってるんです」
Bさんはお休みの日である土日は、必ず外食をする日と決めているらしい。平日はしっかり自炊して、その分休日は好きな物を思いっきり食べて羽目を外す。オンとオフをしっかり切り替えて、メリハリのある生活をしているんだなと感じた。
ちなみにBさんはつい最近、ガチ中華に行き羊料理に挑戦したそうだ。当初はパクチーがこれでもかと散りばめられている料理に不安を覚えたそうだが(Bさんはパクチーが苦手らしい)、これがかなり美味しくてすっかりガチ中華にハマってしまったそうだ。特に羊肉のだしがきいたラーメンが、おすすめらしい。僕も羊肉は好きなので、ぜひ食べてみたいと思った。
「Bさんはオンとオフの切り替えがしっかりできていて、すごいです。充実した毎日を送られているんですね」
「そんな全然ですよ。私メリハリとかないし、自己管理とか切り替えとか、できてないですよ！そもそも自己管理できていたら、太ってないですし。毎日ダラダラグータラです。常に何か食べてますし。自炊しているのは単に料理が好きなのと、家だと誰にも咎められずにたくさんの量を食べられるからです。外食だと、なかなかお代わりできないじゃないですか」
……なるほど。
「基本的にSNSを参考にして、グルメ巡りをしてますね。選ぶ基準ですか……。私はデブなので、やっぱり旨い安い汚いがっつりこってり系が大好きなんです。町中華とかはよく一人で行きますね。でも友人とはなかなかそういうお店に行けないので、サラダが主役のお店とか、生春巻きがあるエスニック系とか、お野菜って言っちゃうお洒落お店とか、メイン料理が一口で飲み込めるようなちまっと盛り付け系の、インスタ映えなお店に行きます」
「一口で飲み込めるちまっと盛り付け系！あーわかります。すごくお洒落でいいなあって思いますけど、ちょっと僕には敷居が高いです」
「私もいつも高く感じてますよ！でも私の友人が、そういう意識高い系のお店が好きなんです。ああいうお店ってお客さんも店員さんも素敵な人ばかりだから、デブにすごく厳しい視線を送ってくるんですよ。友人がいなかったら絶対行かないです」
「やっぱり私みたいなデブには町中華ですよ」と、またBさんは自虐する。Bさんは美人だし、お化粧もネイルもばっちりだし、ファッションにもこだわりがあるように見える。お洒落なお店にいても全然おかしくないし、似合うと思う。むしろ年季の入った町中華で、ビール片手に一人で食事をしている方が想像できない。だけどBさんの話ぶりから、本当に町中華が好きなことがわかった。親近感が湧いた。
「ホピ沢さんのおすすめのお店を教えてください」
「えっと、やきとんのお店なんですけど……やきとんお好きですか？」
「やきとん？わあー大好きです！」
「本当ですか？僕の好きなやきとん屋さんが大森にあるんですけど……」
「……大森？」
「はい。大森、ご存じですか？」
「もちろん！大森って大田区の大森ですよね？京浜東北線の！」
Bさんが突然身を乗り出してきた。
「私、大森に住んでるんですよ！」
なんとBさんは、僕が住んでいる蒲田の隣、大森在住だそうだ。
