2025年6月9日月曜日

40代男が婚活パーティーに行ってみた10

「ありがとうございました。では失礼します」 
 

あっという間だったのか、それともやっとだったのか。Aさんのワキガの激臭に必死に耐えていた僕は、15分間のトークタイム終了の合図に、ちょっとほっとしてしまった。なるべくダイレクトにワキガを浴びないために、鼻呼吸を封じて口呼吸をしていたのだが、それが結構辛かったのだ。
 
「こちらこそありがとうございました。お話しできて楽しかったです」
 
Aさんにお礼を言って退出しようとすると、Aさんはにっこりと微笑んでくれた。その笑顔がやっぱり可愛くて……どうしようもないくらい可愛すぎた。ドキドキのしすぎで、心臓が痛い。悔しいが、Aさんは僕のもろ好みのタイプだと再確認させられた。
 
僅かな移動時間で、僕はAさんのことを考えた。Aさんの印象などを、メモに残しておきたいからだ。
 
Aさんは可愛い。美人。しつこいが、外見は僕のどタイプ。内面も、人当たりが良く穏やかで素敵だった。動物好き。グルメ好き。お酒も好きらしい。たった15分間ではあったが、楽しく話ができたと思う。もし機会があるならば、もう少し話をしてみたい。それはAさんの美しい外見を抜きにしても、交流してみたい気持ちに変わりはない。現段階では、特にAさんについて引っかかる点はないのだ。
 
ただ、臭いだけ。そう、Aさんは、ただ臭いだけなのだ。

今のところ外見にも内面にも、欠点が見当たらない。ただ、臭いだけ。臭いだけなら、悪臭の源を排除すればいいだけの話だ。とはいえ体臭は非常にデリケートな話題なので、本人に臭いを自覚してもらうことは難関だろうし、指摘することで傷つけてしまうかもしれないトラブルも出てくる。しかしそれを乗り越えてしまえば、あとは問題ないのではないだろうか。ただ臭いだけで拒絶するのは、もったいないのではないだろうか。
 
……いや、臭いのは……やっぱりダメかも……しれない……。

そんな葛藤を繰り広げながら、僕は合図と共に、次の方であるBさんの個室に入室した。
 
「こんにちは。ホピ沢です。本日はよろしくお願い……」
 
最後までは言えなかったのは、再び僕の心臓がまるで落雷したかのように大騒ぎし始めたのと、Bさんが僕を遮って話し始めたのが同時だったからだ。
 
「ホピ沢さん〜こんにちは!Bですぅ。よろしくお願いします。いきなりですけど、太っててごめんなさい!ふふふ!」 

Bさんの言葉通り、Bさんはとてつもなく太っていた。
 
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