「私の周りの男性はスコッチがかっこいいと思ってるのか、キメてくる人多いんで〜。あれですか?お酒飲んで語っちゃう感じですか?」
ニヤニヤ笑いながら聞いてきたDさんに対し、僕は、もやあっとした黒い気持ちでいっぱいだった。
おい、D!スコッチがかっこいいとか思ってんのは、お前の方じゃねーのか?別にスコッチ飲んだからって、語んねーよ!語ることなんてねーよ!つーか!お酒があってもなくても、自分語りしちゃう感じなのはお前だろ!
「ホピ沢さんのことを言っているわけじゃないんですけど、私の周りの男性陣は、"ウィスキーをロックで飲むと女性にかっこいいと思われる"、と感じてる人多いんですよ。なんか勘違いしちゃってるんだなあって思いながら、私はその人達の前でガンガン飲むんですけど」
「……お酒がお強いんですね」
「そうなんですよ、びっくりするくらい強くて。45歳でもう年なのに、まだ普通に朝まで飲んじゃうんですよ」
「すごい元気ですね。僕はもう日付を越えると起きていられないので、朝までお酒なんてとても無理です」
「えー!そんなんじゃダメですよ!だったら体鍛えましょうよ。筋トレ大事ですよ!筋肉は裏切らないですし」
「……ははは。筋トレ大事ですよね」
「実際ホピ沢さん、筋肉つけたほうがいいですよ。引き締まった体の方が良くないですか?あ、別にホピ沢さんが太ってるって言ってるわけじゃなくて!ホピ沢さんは全然太ってないです。でももう少しパワーが欲しいって感じで。男性は逞しい体の方が絶対モテますって」
やめてくれ…。急にマジトーンで、僕の体をディスってくんの。
つーかこれって、セクハラじゃないのか?僕が同じこと言ってもお前平気でいられるのか?もし僕が女性の体型について言及でもしたら……Dさんは尋常ではないくらい憤慨して、一生僕の悪評を言い振らしそうだなと思った。
そうしていると、ようやくトーク終了の合図が鳴った。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。なんかおばさんが一人でずっと話していてすみません。でもホピ沢さん話しやすいから、つい話しちゃってえ〜。またお話ししましょう!」
"またお話ししましょう"、じゃねーよ!
