別に、店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋でも、 いいじゃないか。
無様な苛立ちや葛藤、反省や諦めなどで疲弊していた僕の思考は、とうとう回らなくなってしまった。そして、考えることをやめた。もうあすぴょんさんとどこで会おうが、何を食べようが、雰囲気がどうであろうが、何でもいい。大事なのは、あすぴょんさんに会うことだ。
「あすぴょんさんが教えてくださったお店、もちろん知っていますよ。僕も好きで、たまに利用しています。ドーナツも飲茶も美味しいですよね。ぜひご一緒できたら嬉しいです。お店によっては飲茶がないところもあるので、飲茶があって広そうなお店を探してみますね」
そう返事をすると、あすぴょんさんから秒で返信が来た。
「都内のお店は狭そうなイメージですが、フードコートに入っているお店は広くて居心地がいい気がします」
フードコート……？正気か……？
この一文で再び卒倒しそうになったが、ぐっと堪えて片っ端から検索をし、比較的広そうな店舗を探してみる。しかし僕のリサーチ能力では、あすぴょんさんが住んでいる埼玉県と僕の自宅のある蒲田の中間地点には、比較的広そうな店舗が見当たらなかった……というか、探せ出せなかった。
言い訳だが、店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋のホームページでは、ショップ検索はできても、お店の雰囲気や席数まではわからないのだ。だからといって内観や外観、お店の様子を調べるために、一軒ずつ検索をするのは骨が折れる。
ていうか、おい、あすぴょん！ "フードコートに入っているお店は広くて居心地がいい気がします"じゃねーだろ！お前も探せや！
執念で調べた結果、埼玉県からアクセスがいい都内屈指の繁華街エリアに、広そうで居心地も雰囲気も良さそうな、店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋を見つけた。その情報をあすぴょんさんに送ると、光の速さで返事が来た。
「見つけてくださってありがとうございます。飲茶もホットドックも取り扱っているので、安心ですね。街のイメージ的に、不良や犯罪が多くてちょっと怖そうだなと感じるエリアですが、頑張りたいと思います」
頑張る……？なにを……？
もうなんなんだよ！このエリアは嫌ってことなのかよ！違うエリアにしろってことかよ！言ってくれないとわかんねーよ！察せないよ！無理だよ！
僕は静かにスマホを置き、再び考えることをやめた。
お互いの中間地点に？広くて？雰囲気が良くて？居心地も良くて？飲茶があって？ホットドックもあって？店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋？ねーよ！そんな都合のいいお店、あるわけねーだろ！
