どうやらあすぴょんさんは、僕が提案した、埼玉県からアクセスがいい都内屈指の繁華街エリアに行くのは、気がかりらしい。"不良や犯罪が多いイメージなので、頑張ります"と言われた僕は、どうするべきか途方に暮れた。確かにこのエリアは、都内で犯罪率が高いと言われている。しかしそうは言っても観光地でもあるし、大型商業施設もあるし、飲食店も豊富だし、要は何でもある便利な街だ。行かない理由はない。それに犯罪云々を気にしていたら、東京の繁華街なんて出歩けないだろう。
「もしあすぴょんさんがこのエリアに行くのが気が進まないようでしたら、別のお店を探しますよ。もしくは僕が埼玉県に行きます。遠慮なく言ってください」
内心、今更エリアを変更するのは億劫だなと思っていた。また一から広くて雰囲気がいいお店を探すのはつらいし、そもそも会うのは昼間だし、危ない場所には行かないし、目的地は店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋だし、夕方には解散するし……なのでこのエリアに抵抗感を出してくるあすぴょんさんに、若干もやもやしていた。だが、あすぴょんさんがビクビク怯えながら駅で立っている姿を見るのは、嫌だ。それにもしかしたら、過去にこのエリアで嫌な思いをしたのかもしれない。色々ため息をつきたいところだが、お互いが楽しく会うためには、あすぴょんさんの憂いを取り除かねばと思った。
ところが僕の心配をよそに、こう返信が来た。
「いえ、大丈夫です!不良や犯罪は怖いですが、アニメグッズのお店や駅のあちこちにキャラの看板もあるので、心強いです。ホピ沢さんが見つけてくださったお店で大丈夫です」
おい、あすぴょん!紛らわしーんだよ!確かに不良や犯罪は怖いけど!一体なんなんだよ!アニメグッズのお店やキャラの看板があるから心強いって!
結果的に事が決まったとはいえ、スマホ画面を見た瞬間、僕はがっくりと脱力してしまった。大丈夫なら余計な事を言うんじゃねーよ!と思いながら、あすぴょんさんに都合のいい日程を送る。あとはとんとん拍子に予定が決まった。
次回あすぴょんさんに会う日。それは前回一緒にお笑いライブに行った日から、ちょうど一ヶ月だった。