「最近友人が美味しいパンのお店、XXXを教えてくれたのですが、もしよろしければ一緒に行きませんか？」 「ホピ沢さんがおすすめしてくださったレストラン、素敵な雰囲気ですね。とても美味しそうです。ですが私みたいなタイプには、少し敷居が高いなと感じました。緊張しながらご飯を食べると美味しいものも味わえないので、もう少し自信がついたら行ってみたいです」
ちょっと唐突すぎるが、これで断られたらそれまでだ。そう割り切ってあすぴょんさんからの返信を待っていたのだが、僕ははっとした。確かあすぴょんさんは、"お金を出して外食をするなら、味が確実にわかるチェーン店でないと嫌"、と言っていた。もしかしてチェーン店を提案した方がよかったのか？
チェーン店……か。そもそもチェーン店の美味しいパンのお店って、あるのか？いや……ある。だがあっても、あのチェーン店しか思い浮かばない。店舗によっては飲茶が登場するドーナツのお店と、チョコのクロが有名なあのお店と、その系列のベーカリーレストラン。
今からでも、チェーン店を提案するべきだろうか？だが上記のベーカリーレストラン以外のチェーン店は、正直かなり微妙だと思っている。いやドーナツもチョコのクロも好きだが、あくまで婚活的には微妙……という話だ。どうする？チェーン店を提案し直すか？
……いやまずは返信を待とう。全てはそれからだ。その後に次の出方を考えよう。そもそも断られるかもしれないのだから。
この日はあすぴょんさんから返事は来なかった。でも僕は特に気に病むことはなく、まあいいかの精神。その間にマッチングアプリで、他の女性を検索する余裕もあった。あすぴょんさんは光の速さで返事をしてくれる早筆タイプなので、これまでだったら返事が来ないことに結構動揺していたかもしれない。しかしお笑いを一緒に観て以降は、1日1回のやりとりにとどまっている。 1日に何度もメッセージを送り続けるのは性に合わないので、この距離感が気楽だった。
そしてメッセージを送った翌日に、あすぴょんさんから返事が来た。
ああ……お断りルート突入。これであすぴょんさんとのご縁も終わりか……と思った、次の瞬間。
「ホピ沢さんはパンが食べたいんですよね？このお店はどうでしょうか。ここは私の大好きなお店です！もしよろしければ、一緒に行きませんか？」
嫌な予感しかなかった。僕はあすぴょんさんが添付してくれたURLをおそるおそるクリックして……笑った。
おい、あすぴょん！やっぱりかよ！ここはパン屋じゃねーよ！店舗によっては飲茶が登場するドーナツ屋だよ！