2025年2月25日火曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 111

熱々のドリアを食べるあすぴょんさんは、最初の一口で口内を大火事にしたのにも関わらず、冷ますことせずに口に運ぶ。だから何度も「あっつ!熱い!」の火傷を繰り返していた。本当にギャグ漫画のワンシーンのようなのだ。例えばウケを狙ってしているのなら、こちらも反応に困らずツッコミを入れられるのに、これを大人の女性が素でやっているから笑えない。僕は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
 

細かいことかもしれないが、僕は少しあすぴょんさんの食べ方が気になった。おそらく熱いものを冷まさずに食べるからだろう。あすぴょんさんは必ずスプーンを前歯で噛んでから、ドリアを食べる。唇にスプーンが当たると火傷する可能性があるため、あえて前歯でスプーンを噛むのだろう。
 
食べ方だけならまだしも、他にも気になる点がある。前歯とスプーンの金属がぶつかるからか、あすぴょんさんがスプーンを噛む度に、何とも言えない音がするのだ。それが僕にはどうにも耳障りで、あすぴょんさんが食べ終わるまでの間、苦痛だった。ただフーフーして冷まして食べればいいだけなのに。躊躇うことなく熱い食べ物をガンガン放り込んでは火傷を繰り返す人を目の当たりにするのは初めてで、驚きよりも飽きれる気持ちが優ってしまった。

「美味しかったですね!楽しい時間はあっという間、もう二時間経っちゃいましたね」
「そうですね、そろそろ出ましょうか」
「あの、割り勘でお願いします。その方が私の気持ちがすっきりするので」
「わかりました。では僕がまとめて払いますので、あとで半分いただけますか」
「はい!お会計は……あ、奇数ですね。割り切れない……」
 
伝票を見ると、確かに綺麗に割れない金額だった。あすぴょんさんは困った顔をして、「どうしよう」と言っている。しかし僕は全く気にせずレジに向かい、お会計をした。綺麗に割れない時は、自分が少し多く出せばいいだけだ。多く出すといっても、数円程度。多く出したと言うのも、憚られる金額だ。何も悩む話では無いし、たかが数円くらいで不毛な議論をするのもおかしい。
 
会計を済ませた僕は、お手洗いから戻ってきたあすぴょんさんに何故か謝られた。
 
「まずこれは、私の分のお札です。確認してください。あと、本当にすみません。今小銭が、お財布にないんです。コンビニでくずしてきてもいいですか?」
「え?!わざわざくずさなくてもいいですよ!今頂いた分だけでいいですよ!」
「ダメです。それでは割り勘したことになりません。とにかくコンビニに寄ってもいいですか?小銭分をお支払いしていないですし、きっちり割れなかった分もお返ししていません」 

別にそこまで律儀にならなくてもいいのにな、と感じた。そもそも割り勘自体、必要ないと思っている。それに割れなかった分をお返しって……割れなかったのにどうやってお返しするつもりなんだろう。
 
サイゼリヤから少し歩いた先に、青色のコンビニが見えた。あすぴょんさんは申し訳なさそうに「ちょっとお金崩してきますね」と僕に言い、小走りで入店。僕は特にコンビニに用がなかったし、お金を崩すあすぴょんさんにぴったりくっついている理由もなかったので、店先で待つことにした。

 にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ