青いコンビニの店先で帰りの電車の時刻を調べながら、あすぴょんさんを待った。しかし10分経ってもあすぴょんさんが出てくる気配がない。どうしたんだろうと思い窓越しから店内の様子を探ってみたが、あすぴょんさんの姿は見えなかった。
本当にどうしたんだろう。お金をくずすのに、10分もかかるものだろうか。心配になった僕は入店しようとして……やめた。もしかしたら、お手洗いかもしれない。急なアクシデントが体内で発生してしまうことだってあるだろうし、僕も結構な頻度で緊急事態に陥っている。思わぬトラブルだと決めつけるのはよくない気もしたが、詮索するのはやめようと思い、このまま店先であすぴょんさんを待った。
「ホピ沢さん、遅くなってすみません。お待たせしました」
まもなく20分が経とうとしたところで、あすぴょんさんはコンビニから出てきた。心なしか顔色が悪い。触れない方がいいのかなと感じたが、つい「大丈夫ですか」と言ってしまった。本当に具合が悪そうなのだ。あすぴょんさんは「大丈夫です。遅くなってすみません」と、謝りながら僕に小銭を差し出してきた。
「これ私の分の小銭です」
「わざわざすみません。ありがとうございます」
僕はそれを受け取った後……なんだか手のひらの重さと感触に違和感を感じて、思わず手元を凝視する。僕の手の中にいたのは、小銭に紛れたチロルチョコだった。
「これは……?」
「チロルチョコです。え、まさかチロルチョコをご存じないんですか?」
いや、知ってるよ!知ってるに決まってるんだろ!チロルチョコ知らないヤツなんていねーよ!そういうこと聞きたいんじゃねーんだよ!
「いえもちろん知ってますけど……どうしたんですか、このチロルチョコ」
「先ほどサイゼリヤで多く出していただいたので、そのお礼です。多く出していただいた金額に近かったので、チロルチョコを選びました。チョコお好きだって聞いたので。うまい棒と迷ったんですけど……うまい棒の方がよかったですかね?」
生真面目な表情で尋ねられた僕は、胸中を覆うもやもやを力一杯掻きむしりたくなったが……辛うじて「チロルチョコで……大丈夫です……」と答える。僕の力無い声にも気づかないのか、あすぴょんさんはほっとしたように笑った。
つーか、そんなんどっちでもいいよ!つーか、別にいらないよ!つーか、そんなにきっちりできんなら、時間守れや!遅刻すんなや!チケットの発券スムーズにしろや!