2025年1月14日火曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 94

「改めまして、ホピ沢です。生まれも育ちも蒲田です。現在も蒲田に住んでいますが、以前は仕事の関係で、北海道や東北、関西などにも住んでいました。今のところ転勤の予定はありません。仕事はXXの研究をしています。家族は両親、妹、犬です。趣味は食べ歩きと飲み歩きです。運動不足解消のために、ランニングを日課にしています。家では読書をしたり、音楽を聴いたり、漫才を観たり、実家の犬と遊んだり……ですかね」
 

他に趣味なんだっけ……と考えて冷や汗が流れた。こうして言ってみると、僕にはこれといってかっこいい趣味がない。かっこいい趣味ってなんだよという感じだが、例えばハツラツしている印象を与えるものとか、芸術的な感性を思わせるものとか、特別感溢れる類のもの。日課のランニングも特に趣味ではなく、体重維持のための義務感で、闇雲に走っているだけだ。これを機に何かやろうかな……と思った矢先、あすぴょんさんが突然身を乗り出してきた。
 
「漫才?もしかしてお笑いがお好きなんですか?」 
「え?ええ……テレビを観たり、youtubeを観たり、たまにお笑いライブを観に行く感じですけど……」
「え!ライブ行くんですか?すごい、ガチじゃないですか!」 
「いえ、ガチってほどでは……」
「ガチですよ!ちなみに誰がお好きなんですか?」
 
漫才が好きと言っただけで、こんなに食い気味で質問されるのは初めてだった。僕は戸惑いながら、好きな芸人を数人挙げる。するとあすぴょんさんはその中の一人、芸人Aに過剰に反応。「私も芸人Aが好きです!」と手を叩いて喜んだ。

「実はこの間、芸人Aのお笑いライブに行ったんです。もう本当に楽しかったです!生のライブ、最高でした!」
「僕もこの間、芸人Aのライブに行きました」
「え!ちなみにいつですか?私はX月X日なんですけど……」
「え……?僕もX月X日のです……11時の回で……」
「えー!私も11時の回でした!偶然ですね!ちなみにお席はどの辺りでした?」
「確か……△列の8番だったと思います」
「私も△列!△列でした!20番でした!

僕とあすぴょんさんは、謎の高揚感に包まれていた。こんな偶然って本当にあるのか?同じ日時に、同じ席列で、同じ芸人のライブを鑑賞した女性と、マッチングするなんて。しばしお互い驚きで、言葉を繋げなかった。
 
「あのホピ沢さん……」
 
気を鎮めるためだろうか。数本のポテトをスピーディーに摘んだあすぴょんさんが、神妙な面持ちでこう切り出した。
 
「もしよろしければ……一緒にお笑いライブに行きませんか?」

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