予定を忘れられたという事実だけでもダメージなのに、それに加え、次の予定をいけしゃあしゃあと尋ねてくるサリーさんの無神経さ。思わぬところから殴られたようなショックに、僕の中で何かがぶつっと切れた。
ぶつっと切れたものの正体は不明だが、急速に感情が冷えていくのを感じた。この時の僕は理性的ではなく、相当頭に血が上っていたのだと思う。何もかも投げ出してしまいたい衝動に襲われた僕は、気づけばサリーさんをブロックしていた。
姪から貰ったハンカチ、結局戻ってこなかったな。
冷静になった時は何もかも手遅れだったが、サリーさんをブロックしたことに関しては微塵も後悔などしていない。ただ同じ銘柄のハンカチを買って、さも"姪からのプレゼント"、と偽るのが心苦しかった。タクシー代の一万円は、寄付したと思うことにする。
この歳まで結婚できない僕には、人一倍誰よりも、人として劣っている部分や歪んだ性質があると自覚している。他人のことをどうこう言える立場ではない。それは重々承知している。だからサリーさんのことは、もうあれこれ言うまい。
ただ、人の振り見て我が振り直せ……ではないが、サリーさんの言動から心を引き締めようと思った。
約束を守ること、思いやりや気配りを忘れないこと、言葉遣いには気をつけること、相手を無意識に傷つける言動はしないこと。
これらを改めて肝に銘じて、また婚活に励みたいと思う。