"それでこんな時に提案するのも心苦しいのですが、改めてご都合の良い日を教えてください。今度こそタクシー代とハンカチを、お返しさせてください"
おい、サリー……。
僕は……一度スマホを閉じた。そして時間を置いて、再度サリーさんのメッセージを読んだ。という動作を何度か繰り返して気持ちを整理しようとしたが、整理されるどころか心が波立つばかり。しばしの間、言葉では表現できないもやもやとざわざわに苛まれた。
仕事にトラブルは付き物。予期せぬ出来事に見舞われ、連絡ができない状況になってしまったのは仕方がない。 僕は教育現場のことは一切わからない。しかし保護者への対応は、一際神経をすり減らす仕事だろうことは容易に想像できる。特に今回は児童が怪我をしているわけだし、一つ対処法を間違えれば火に油を注ぐ結果になる。だからサリーさんが、僕が駅で待っている間に連絡できなかったことは当然だな思う。理解したし、納得もした。
だがサリー……お前なんで忘れてんだ?
お前が、"タクシー代とハンカチを返したい"、と言い出したことだろ!しかも延期しようという僕の提案を拒んで!大雨にも関わらず、"私は雨大丈夫!"と、強行しようとしただろ!
それなのになんで忘れてんだよ!!