交通機関が乱れるほどの大雨なのに、一体何が大丈夫なのだろう。テレビやネット等でも、不要不急の外出は避けるべきだと呼びかけられているのだ。こういう日は極力特別なことはせずに、最低限の行動にとどめようとするのが普通だと思うのだが……それでも延期の提案をスルーするサリーさんがわからない。それとも僕が用心しすぎなのだろうか。逆に僕に対して、「こんな雨くらいでビビってんじゃねーよ」と、思っているのかもしれない。
いやでも……帰宅できなくなったら困る。僕は慌てて、"やはり延期がいいと思います。帰れなくなると困りますから"と送ろうとした。しかし文字を打っている最中に、"では19時に待ってます"、とサリーさんからメッセージが来てしまい……延期を押し通しにくい空気になってしまった。
結局僕は大雨強風の中、サリーさんとの待ち合わせ場所に向かうことになった。不幸中の幸いではないが、職場から待ち合わせ場所までの道のりには、ほぼ屋根がついていることが救いではあった。
わかっていたことだが、待ち合わせ場所のXX駅は大勢の人でごった返していた。既に運休が決定した路線が複数ある。不安そうに電光掲示板を見上げる人や、駅員さんに詰め寄る人など、慌ただしく時に殺伐とした雰囲気の中、僕は邪魔にならないように隅っこに立っていた。
しかし待ち合わせ時間の19時を過ぎても、サリーさんは姿を現さなかった。
おい、いい加減にしてくれよ！約束の時間に絶対に来ない感じのヤツ、一体何回目だよ！
