"でも私、奢られたりお金を貸してもらうのが苦手なんです。相手に借りができたような気持ちになってしまい、それがすごく重荷に感じてしまいまいます。だからお返ししたいです"
おい、サリー!"奢られたりお金を貸してもらうのが苦手"って言っておきながら、あの日「今日はごちそうさまでした」ってちゃっかり僕に奢られてるじゃねーか!
メッセージを読んだ瞬間「いや苦手じゃないよね!奢られてるよね!」と、声に出して突っ込んでしまった。僕が嫌がるサリーさんに無理を言ってご馳走したのならまだしも、あの時は伝票を受けとるや否や、サリーさんは率先して「ごちそうさまでした」と言ったと思う。僕の記憶違いでなければ。とはいえ、あの日のサリーさんは酔っていた。言行不一致状態になってしまったのも、致し方ないかもしれない。
確かに僕も、奢られたりお金を貸してもらうのが苦手だ。できればそういう事態は避けたいし、できるだけ避けてきた。万が一そういったことがあった時は、速やかに借りを返したい。サリーさんの主張には、完全に同意だ。
相手のためにというよりは、自分の心の負担を減らすために返したいのが本音。 サリーさんに会うのは気が進まないが、もし自分がサリーさんの立場だったら、きっと同じことを考えるだろう。それにやっぱり、姪から貰ったハンカチは返してもらいたいなと思った。
"わかりました。ではXX駅でお会いするのはいかがでしょうか?僕の都合の良い日は以下の通りです。お忙しいと思いますので、今回は用事が終わり次第、そのまま解散という形はどうでしょうか。サリーさんは僕に食事をご馳走をしたいとおっしゃっていましたが、お気持ちだけで結構です。どうかお気になさらず"
これがいいだろう。返すものを返してもらってさようなら。そう考えていると、サリーさんから返信が来た。
"わかりました。では△日の19時はどうでしょうか。XX駅で大丈夫です。よろしくお願いします"
こうして僕は再びサリーさんと会うことになった。
