泥酔したサリーさんが無事に家に帰れたのか心配になった僕は、「お家に帰れましたか?具合は大丈夫ですか?」と連絡し、彼女の返信を待った。
しかし翌日になっても、それどころか1週間経っても、サリーさんからは返事がなかった。
メッセージを送ってから、もう1週間経っているのだ。さすがにサリーさんは無事に家に帰っていて、普通に日常生活を送っているだろう。その証拠に、僕が送ったメッセージの横には既読と表示されている。サリーさんが目を通したのは明らかだ。その上で返信がないということが、彼女からの返事なのだろう。サリーさんとはこれで完全に終わったんだな、と僕は納得した。
縁が切れる時はお互いにブロックをして終わるものだと思っていたが、僕とサリーさんはブロックし合っていない。ブロックするべきなのだろうか。もう会うことも連絡することもないので、お互いの影がちらつかないようにブロックした方がいいかなと思う。しかし一点だけ、後ろ髪を引かれる思いがあった。
実はサリーさんを介抱している時、僕は脂汗をかいていたサリーさんに、ハンカチを渡した。特に他意はない。単純にハンカチを持っていなかったサリーさんに、使って欲しいと思って差し出しただけだ。
今現在そのハンカチは、サリーさんの手元にある……はずだ。
別にハンカチ一枚くらいで、騒ぎたいわけじゃない。本来であれば、返さなくていいから適当に処分してくれて構わないと思うのだが、今回は少々事情があった。
実はそのハンカチは、誕生日に姪がプレゼントしてくれたものなのだ。
自分で買ったものなら諦めがつくものの、可愛い姪からのプレゼントを手放すのは心苦しかった。とはいえ、縁が切れた女性に今更、「ハンカチを返してください。姪から貰ったものなんです」と言うのも、滑稽に思えてくる。
サリーさんに連絡ができない僕は、結局同じ柄のハンカチを買って、折り合いをつけることにした。姪には本当に申し訳ないと思う。それに同じ物を買って、あたかも姪に貰ったような感じを装う自分は、本当に姑息だ。大人の事情に免じて許して欲しいと思っている思考にも、嫌気がさした。
ハンカチのことは忘れようと、無理やり自分に言い聞かせた。そしてまた一から婚活頑張るか、と気合を入れ直した矢先のことだった。
サリーさんから連絡が来たのだ。