馴染みの町中華の炒飯で心身が満たされると、ふと脳裏に心配事がよぎった。
サリーさんは、きちんと家に帰れたのだろうか。
あの時は、サリーさんをタクシーに乗せるのが最善だと思った。しかしよくよく考えると、酔っ払って前後不覚になった女性を一人で帰らせたのは、不誠実だったかもしれない。泥酔していたサリーさんは、自分の置かれている状況を全く理解できていなかったのだ。僕のサリーさんに対する対応は、冷たくてひどかったような気がしてきた。
サリーさんはタクシー運転手に迷惑をかけていないだろうか、車内で嘔吐していないだろうか、赤羽駅で降りれただろうか、危ない目にあってないだろうか、家に帰れただろうか。次々と不安が浮かんでくる。
僕は自身の判断と行動を、心底後悔していた。初対面の人にそこまで尽くす必要はない気もするが、具合の悪い人を最後まで介抱せずにタクシーに押しつけたのは、まずかったと思う。しかも酔って無防備な女性。悪いことに巻き込まれる可能性だってある。下心があると誤解されるのが嫌だと保身に走らず、タクシーに同乗して赤羽駅まで付き添うべきだった。
まずはサリーさんに、メッセージを送ろう。 気持ち悪がられたとしても、無事に家に帰れたか聞くべきだ。僕はサリーさんに「お家に帰れましたか?具合は大丈夫ですか?」と連絡し、彼女の返信を待った。
正直なところ、今後サリーさんと会うつもりはない。サリーさんは、趣味が多くてアクティブで楽しい人だと思う。でも初めて会った時の、僕を見て露骨にがっかりしたあの態度や、隠すべきところで負の感情を露わにしてしまうところや、本人にその気がなくても他人を傷つける言葉を言ってしまうところが、僕は嫌だった。それにサリーさんから、お断りされるだろうと思っている。サリーさんは酔っていたとはいえ、もう僕とはこれきりだと思っているからこそ、"背が低い男性が無理"、な話をしたのだろう。
だからメッセージを送るのも気が進まなかったが、そこは別の話。家に着いたという連絡さえ貰えたら、それでいい。
しかし翌日になっても、それどころか1週間経っても、サリーさんからは返事がなかった。