2024年10月4日金曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 55

「違います!全然違います!赤羽と蒲田は全く違います!一緒にしないでください!」
「ご、ごめんなさい……」
 
おい、サリー!なに私はお前とは違うみたいな態度してんだよ!蒲田も赤羽も変わんねえじゃねーか!
 
楽しい雰囲気が、急変。蒲田VS赤羽の不毛な論争の所為で、一気にまた重苦しい空気になってしまった。
 

サリーさんは冗談めいた口調で「蒲田と赤羽を一緒にしないでください!」と微笑んでいたが、瞳の奥は全く笑っていなかった。僕の"失言"が、サリーさんの機嫌を損ねたのは明らか。眉間に皺を寄せながら、黙々と目の前のカムジャタンを口に運んでいる。隠しきれない苛々オーラは、僕を萎縮させた。

おい、サリー!なんでそこまでトゲトゲすんのか知らないけど、実際お前の方が僕に失礼なこと言ってんだからな!「蒲田によく住めますね」だと?怒りたいのはこっちだよ!
 
僕だって内心、腑が煮え繰り返るほどムカついている。蒲田を馬鹿にされたこともそうだが、そもそもそれ以前に、他人の出身地や居住地を平気で嘲笑する神経が不思議でたまらない。前回のマッチングアプリの相手、タケウチさんもそうだった。彼女達は、一体どういう心境で侮蔑発言をするのだろうか。いや、何も考えていないからこそ、思ったことをそのまま発するのか。
 
もし僕が新潟出身のサリーさんに、「新潟って田舎ですよね?なにもないですよね?よく住んでましたね」なんて言ったら、その瞬間にサリーさんから渾身の張り手をくらうんじゃないだろうか。

「サリーさん、グラスが空いてますが、何か飲みますか?」
 
脳内を必死にこねくり回して話題をかき集めてみたが、結局当たり障りのないことしか言えなかった。というか、余計なことは一切口にしない方がいい。良かれと思って会話を繋ごうとしても、もしかしたらサリーさんにとっては、それが爆弾になるかもしれない。僕は相当ビビっていた。

「うーん。あ、ホピ沢さん。もしよかったら生マッコリ飲んでみませんか?」 
「生マッコリ……?普通のマッコリと違うんですか?」
「生マッコリは普通のと違って、加熱されてないんです。だからちょっと繊細で、美味しいんですよ」
「では、ぜひ」
「じゃあ頼んじゃいますね。すみませーん」
 
その衝撃は、何の前触れもなく襲ってきた。
 
注文するために手を上げたサリーさんの脇から……脇毛が見えたのだ。

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