2024年9月27日金曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 52

結局サリーさんは、お店側に遅れる旨を伝えていなかった。それを知った僕は、急いで店員さんに謝った。だが予約時間を20分以上過ぎて来店した僕とサリーさんを、店員さん方は快く迎えてくれた。おそらくそれは、サリーさんがこのお店の常連だから通用することなのだろう。とはいえ、いくら顔馴染みであっても、僕はお店側に遅れたことを謝罪しないサリーさんに、もやもやした。
 

席についた後、まずはドリンクをオーダー。今回は本格的な韓国料理を食べることが目的なので、料理のセレクトは韓国通のサリーさんに全てお任せした。本来であれば、僕も積極的にメニュー選びに参加するべきなのだろう。しかしサリーさんは、僕が介入しない方が都合がいいようだった。「私のイチオシの料理を頼みますね」と、張り切ってオーダーしてくれた。ちなみに僕は、一度蒲田のとあるお店でサムギョプサルを食べたきりで、ほとんど韓国料理と縁がない。
 
注文後すぐにビールとレモンサワー、そして種類豊富な韓国系のお通しがテーブルに並ぶ。そこでようやく乾杯をし、僕とサリーさんは落ち着いて挨拶を交わした。
 
「ホピ沢です。本日はお忙しい中、わざわざ来てくださってありがとうございます。お仕事は大丈夫ですか?」
「サリーです。こちらこそありがとうございます。仕事は全然大丈夫です!遅れてすみません」 
「……」
「……」
「これ美味しいですね……」
「それは塩漬けしたきゅうりを切って、唐辛子とにんにくと胡麻油で和えたものですね」 
「へえ……これは……」
「千切りしたじゃがいもを、にんにくと胡麻油で炒めた感じですね」
「……」
「……」

だめだ。全然話が続かない。

サリーさんに会った瞬間を、どうしても思い出してしまう。まるで不審者を見るかのように僕を睨みつけてきたサリーさんの目つきや、"お前はお呼びじゃねーんだよ"と絶望を貼り付けたサリーさんの表情や、"お前はマジで論外"だと匂わせてきたサリーさんの空気が、頭からこびり付いて離れない。
 
その所為で僕は完全に萎縮してしまい、全く言葉が思いつかなかった。なんとか捻り出して発した会話が、ひたすらお通しを誉めて褒めちぎること……のみ。この雰囲気を打破した方がいいと思いつつも、"今後お前とはなにもない"と、見限られている相手に頑張るのもどうなのだろう……と、僕は虚無に沈んでいた。

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