"別れ際のお母様の話、絶対嘘ですよね?ホピ沢さんは優しいから、きっと女性を遅くまで連れ回すのはダメだと思ったんですよね?だから私を気遣って、嘘をついてでも終電に乗せようとしてくれたんですよね? "
おい、タケウチ……何をどうしたらそんなスーパーポジティブ思考になれるんだよ!
タケウチさんは……すごい。
僕があの手この手で対策を講じても、予想外の発言で次々と距離を詰めてくる。僕のマザコン言動を、"自分のためにあえてしてくれた"と、言い切るタケウチさんの思考回路は、とても常人に理解できるものではないと思う。タケウチさんの超絶前向きな姿勢を受けて、いちいち悩んでいる自分が馬鹿らしくなってしまった。
僕は躊躇わずに、タケウチさんをブロックした。 その瞬間、タケウチさんとの繋がりは消滅。あれだけ僕の心を騒がせていたタケウチさんとのメッセージは、全て見ることができなくなった。
タケウチさんについて、ちょっとなんと言ったらいいか……言葉が見つからない。ただただ、強烈な女性だった。
プロフィール写真を別人級に加工したことから始まり、蒲田ディスリ、執拗な僕の実家詮索、家事はしないけどやればできる子宣言、過去の恋愛武勇伝語り、支払いのタイミングでトイレへGO、終電引き止め、そしてスーパーポジティブ思考……など、タケウチさんを彩る全てが凄まじいものだった。
最後の最後までタケウチさんは、遥か斜め上をいく度肝の抜き方をしてくれたなと思う。
ここまでパワフルな女性に出会ったのは初めだし、おそらくタケウチさんレベルの女性と知り合うことはもうないだろう。そのくらいタケウチさんは、奇天烈を極めていた。
とはいえ少なからず、タケウチさんには感謝している。とても貴重な体験をさせてもらったし、何よりこんな自分と会ってくれた。色々思うことはあるが、やはり会いたいと思ってもらえた気持ちは、素直に嬉しかったのは事実。タケウチさんとの会食を通して、もっと婚活頑張ろうとやる気を貰えた。
完全にタケウチさんとの繋がりを絶った僕の気持ちは、次に向いていた。
タケウチさんと同時進行でメッセージのやりとりをしていた、サリーさんに会うからだ。