ついにタケウチさんに会う日を迎えた。僕の複雑な気持ちに反して天気は絶好調で、雲一つないあけすけに晴れた日だった。
タケウチさんとは、16時45分に某ターミナル駅の南口改札付近で会う予定になっていた。連日30度越えの猛暑が続いており、この日の最高気温は33度。約束の時間ギリギリに向かうと、汗が引かずにダラダラ垂れるかもしれない心配があったため、僕は早めに目的地に向かった。隣接している駅ビルの中で、冷房にあたりながら涼んでいようと思ったのだ。
待ち合わせ時間まで、ウィンドウショッピングをしながら身体を極限まで冷やして汗を一掃した僕は、約束の5分前に待ち合わせ場所に立っていた。そしてマッチングアプリのメッセージ機能を使用して、「到着しました。XXの看板の辺りに立っています。青のストライブのシャツを着ています」とタケウチさんに連絡をする。週末ともあって、待ち合わせ場所は大混雑していた。せっかく消滅した汗も、またぶり返しそうなくらい、人の圧も熱気もすごかった。緊張も最高潮だった。
大丈夫、きっと有意義な時間を過ごせるはずだ。
タケウチさんの突拍子もない主張をきっかけに、あれよあれよと会うことになってしまったとはいえ、あまり気負わずに楽しみたいと思う。彼女の奇天烈な発言を受けて、驚きのあまり椅子から転げ落ちて床にめり込みそうになったこともあったが、おそらくタケウチさんは裏表のない素直な人なのだ。面と向かって話せば、タケウチさんの魅力を知れる気がする。落ち着け、自分。
しかし、待ち合わせ時間を5分過ぎた16時50分になっても、タケウチさんらしき女性は現れなかった。