2024年8月5日月曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 31

サリーさんと新大久保で会うことが決定したのも束の間、タケウチさんからメッセージが届いていた。
 

 "芸術といえば、東京芸術劇場の近くに、美味しいもつ鍋屋さんがあるんです。ホピ沢さんと行けたら楽しそう♪"
 
僕はタケウチさんから貰ったこのメッセージに、まだ返事をしていない。それにもかかわらず、タケウチさんは僕の返事を待たずに次のメッセージを送ってきた。一体どうしたのだというのだろう。嫌な予感を覚えながら、僕はメッセージを開いた。

"ホピ沢さん、ちょっと鈍すぎです笑 過去にそう言われたことありませんか?女の子が頑張って仄めかしてるんですよ?こういう時男性は、女の子の気持ちを察して、スマートに食事に誘うものですよ!ていうか、誘ってくださいよ!!ここまで女の子に言わせるのは野暮!!絶対女心わかってないって言われたことあるでしょー笑"
 
……。
 
"今回は仕方ないので私から誘っちゃいますが、次からは絶対に必ずホピ沢さんから誘ってくださいね❤︎ ホピ沢さんは、フレンチ、もつ鍋、イタリアンどれがいいですか?私はイタリアンがいいなあ〜" 

……。

いや……何言ってんだ?

普段の僕ならこのメッセージに、そう突っ込んでいただろう。タケウチさんの突拍子もない主張に、乾いた笑みを浮かべていたかもしれない。タケウチさんにそんな意図はなくても、彼女の押しつけがましい態度を許容できなかったはずだ。
 
だがこの時の僕は、冷静な判断ができなかった。タケウチさんの奇天烈な発言を受けて、「僕はタケウチさんの機嫌を損ねてしまったのだ……」と、謎に焦ってしまった。僕は自分自身の言動によって他人にマイナスの感情を持たせてしまうことを、恐れている。
 
だから「タケウチさんのお気持ちを汲み取れずに、申し訳ありません。ぜひイタリアンに行きましょう。女心は勉強中ですので、どうぞお手柔らかにお願いします」 と返信してしまったのだ。実際タケウチさんに指摘されるまでもなく、彼女を誘うか誘うまいか悩んでいたことは事実。しかし言い訳がましく聞こえてしまうので、それは伏せて全面的に非を認める文にした。
 
なにやってんだ……自分は?
 
タケウチさんにメッセージを送ってから暫く時間が経つと、ざわざわしていた頭が冷えて、正気になった。まだタケウチさんに会う気持ちが固まってもいないのに、タケウチさんの強気な文章に動揺して会う流れにしてしまった。僕は馬鹿なのか?我に返ると、己の愚かさに愕然とした。そして同時に、こんな気持ちでタケウチさんの誘いを受けてしまったことにも、罪悪感が込み上げてきた。
 
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