"丁寧に説明してくださって、ありがとうございます。嘘がないことがわかって、とっても安心しました。ホピ沢さんの見た目やプロフィールが私の好みだったので、もしこれが嘘だったらショックだなあと思っていました!私の中で根暗なイメージの研究者の印象も、ホピ沢さんのおかげでがらりと変わりました!ホピ沢さんとご飯一緒に行けたら、楽しそう♪"
ようやく無事に年収虚偽疑惑が晴れて一安心と思いきや、タケウチさんのメッセージの文末を目にして、え……っと思考が固まってしまった。
"ホピ沢さんとご飯一緒に行けたら、楽しそう♪ "
これは僕がタケウチさんを食事に誘う流れなのだろうか……?
別にタケウチさんから、食事に行きたいと言われたわけではない。しかし"ホピ沢さんとご飯一緒に行けたら、楽しそう♪ "は、話の前後に繋がりがなく唐突だった。だから僕は、タケウチさんが突然脈絡がないことを言ってきたのは、何か意味があるのかもしれないと思ってしまった。妹からの「自分からは絶対に誘わないで、男性から食事に誘うように仕向ける女性もいるから」という忠告も、余計に深読みさせる。
実際タケウチさんにとってみれば〆の文が思いつかず、とりあえず適当に言ってみただけのことかもしれない。僕の経験を省みると、そういえば思わせぶりな態度を取る女性が多かった。これはあくまで僕の思い出の中の女性の話だが、明らかに食事に誘ってほしい口振りをしておきながら、実は違うという人が何人もいた。僕はそれに振り回されて、痛い勘違いを重ねたことが何度かある。
明確な意図もない文に翻弄されて疑心暗鬼になるのは嫌だし、自意識過剰の勘違い野郎になるのも嫌だなと思ってきた。
だから僕は、その"ホピ沢さんとご飯一緒に行けたら、楽しそう♪"は受け流して、"もうすぐパリ五輪が始まりますが、タケウチさんは注目されているスポーツはありますか?"と返信した。スポーツ観戦好きのタケウチさんであれば、絶対に五輪は観るだろうと思ったのだ。
しかしタケウチさんの五輪への反応は薄かった。それどころか、またふわっと仄めかしてきた。
"バスケは観るつもりです。ところでパリといえば、XX区にある△△というフランス料理が美味しかったので、また行きたいなと思っています。ホピ沢さんと行けたら、楽しそう♪"
やっぱりこれは、タケウチさんは僕に誘ってほしいということなのだろうか。