退会するつもりで数日ぶりに開いたマッチングアプリには、複数の"いいね"やメッセージがきていた。長いことログインしていなかった僕のアカウントは、アプリ上で埋もれていただろう。それにも関わらずアクションを貰えたことに、僕は不思議な気持ちと嬉しさを感じていた。
どんな女性たちが、僕に"いいね"やメッセージを送ってくれたのか気になった。退会するつもりだが最後に一応見てみよう。そう思ってメッセージ欄を確認した。
"いいね"は、36。 メッセージは、4通きていた。
まずは、"いいね"を送ってくれた女性に目を通す。申し訳ないと思いつつ、プロフィール画像を顔写真に設定していない方や、顔写真を載せていても、不自然な加工を施している方、ぼやかしたりモザイク処理などをして不明瞭な画像にいる方など、スキップした。
びっくりしたのは、メインの顔画像に、プリクラ加工風の写真を選ぶ女性がまあまあいるということ。大きすぎる目、真っ白すぎる肌、紅すぎる頬といった、いわゆる"宇宙人顔"の写真は、ウッとなる。不特定多数の方が集まる場に、ありのままの自分を載せたくない気持ちはわかる。しかしその加工写真を、こちらはどういう心境で見ればいいのか……ちょっと困るのだ。
そんな中、「お」と、目に留まったサブ写真があった。僕の職場の最寄り駅に設置されている、オブジェの写真を載せている女性がいたのだ。オブジェとツーショットではなく、オブジェのみ。
どうしてこのオブジェを載せたのだろう。何か思い入れでもあるのだろうか。ちなみに職場の最寄り駅は、住宅街や観光地ではなく、ビジネス街。用事がない限り、なかなか訪れないエリアであると思う。
そんな興味から僕は、その女性のプロフィールをチェックした。彼女の名前は、タケウチさん。彼女のメイン写真は、とあるプロバスケットチームのマスコットキャラクターと一緒に、笑顔で写っているものだった。