2026年8月28日金曜日

40代男が婚活バスツアーに行ってみた41

この婚活バスツアーの参加者は、男性が20名、女性22名らしい。らしい、というのは、会は終盤になりつつあるが、まだ全員と会話できていないからだ。ごく一部の方としか自己紹介を済ませていないため、例えば屋外ですれ違ってもバスの参加者なのか判断できないレベル。だからあの出禁を言い渡されたわんちゃんハウスにも、僕が気づかないだけで、バスの参加者はいたのだろう。むしろバスの参加者しかいなかったかもしれない。
 

だからなのか、次も次もその次も、自己紹介タイムで隣に座った女性たちは皆、よそよそしかった。先ほどの強気の女性のように「出禁になったのか」と直接尋ねてくる人はいなかったが、なんとなく感じるものがある。視線は厳しかったし、僕と関わりたくない空気がびしびし漂ってきた。当然会話は全然弾まなく、ぎこちない。
 
そういうこともあって、打ちのめされた僕は、頑張ることを放棄した。「出禁は僕の所為じゃない!」と強く主張できるのが一番いいのだが……ここで必死に誤解を解いたところで、何か良いことがあるとは思えない。むしろ逆に、責任を誰かに押し付けようとする嫌な奴に成り下がる可能性もある。
 
僕は五分間の地獄の自己紹介タイムを、ただひたすら無になって流れ作業のようにこなした。だって諦めないで食らいついても、目の前の女性たちは僕と距離を取りたそうにしていたから。
 
そうして淡々と作業を繰り返していた僕は、また同じように席を移動する。次の女性もきっと僕を軽蔑の眼差しで見るんだろうな……そう思って挨拶をすると、目の前の女性は目を丸くして僕を眺めていた。僕を敵視しているわけではなさそうだったが、不躾というか遠慮がない。まるで穴が開くまで僕を見つめていた。
 
「……もしかしてホピ沢?」 
 
しばしの沈黙後、女性に呼び捨てで名を呼ばれた。 失礼すぎる。しかも相変わらず食い入るように、僕を凝視していた。その厚かましい視線は気分のいいものではないので、僕は少しイラッとしてしまった。
 
しかし何故女性は、僕の名を知っているのだろう。 まだ名乗ってもいないし、自己紹介カードを渡してもいない。怪訝に思ったが、渋々頷いた。
 
「はい、ホピ沢ですけど……」
「え、やっぱホピ沢?うわー、すごい偶然。私、クドウだよ」 
 
クドウ……誰だ?
 
当初僕の脳裏には、日本一有名な高校生探偵の顔しか浮かばなかった。 

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