ムラマツさんとトークを終えた後、次の女性と話をしようとした瞬間、ちょっとしたアクシデントがあった。僕が次話す予定だった女性が、なんと車酔いのため吐き気を催してしまったのだ。僕は、狼狽えた。
「大丈夫ですか?」
「……すみません」
吐いてしまったのだから、大丈夫なわけがない。それでもそれ以外のかける言葉が見つからず、僕は当たり障りのない声かけをした。幸い当事者の女性は袋の中で事を済ませたので 、大惨事になることはなかった。とはいっても隠しきれない臭いというものはどうしてもあり、車内はなんともいえない微妙な空気になった。
「もしよかったらこれを使ってください」
僕は、先ほどサービスエリアで買い物した時に購入した袋を、女性にあげた。そしてコロナ以降から常備している除菌シートも渡す。余計なお世話かと思ったが、濡れたシートは使い道があるだろうと思ったのだ。
「これ飲んでないので、よかったらお水どうぞ」
僕の通路挟んで隣に座る男性が、ペットボトルを渡して助太刀してくれた。それをきっかけに、恐る恐るという感じで周囲の方々が声をかけ始める。
こういう時は、大げさに騒ぎ立てるのは良くない。ただでさえ嘔吐してしまった女性自身が一番、羞恥心や申し訳なさ、そして屈辱を感じているのだ。過剰に騒いで全員に知られるような真似はしない方がいい。彼女の席の近くに座る人たちと共に、僕は静かに事を見守っていた……のに……。
「どうしました?次の移動始まってますよ?って……え!?吐いた!?具合悪いんですか!?大丈夫ですか!?」
女性添乗員さんがマイクONの状態で、全てを曝け出してしまったのだ。
車内は、騒然。当事者の女性は、動揺。僕は、困惑。
