自分のことを棚に上げて何言ってるんだ、というお叱りは承知の上だが、ムラマツさんは本当に地味だった。
地味というか、野暮ったいというのだろうか。
ボリュームがありすぎて収拾つかないのか、ボサボサ黒髪ロングヘア。上下どちらもオーバーサイズ気味のトップスと、ロングスカート。化粧っ気がなさそうなフェイスに、涼しすぎる一重瞼。そして極め付けは、うっすら生えた口髭。全体的に重たい印象を与える、外見だった。
黒や茶色などを多用しているからか、とにかく色が見当たらない、という感じだ。唯一色を感じたところといえば、鞄にぶら下がっている、なんか小さくてかわいいやつの、白いぬいぐるだろうか。
「ところでそのキーホルダー買われるんですか?」
「え……ええ、姪が好きなので、買おうかなと思いまして……」
「あー……じゃあ、ホピ沢さんはお好きではないんですね……」
「グッズを集めるような好きではないですが、一応漫画は読んでいますよ」
その瞬間、暗かった彼女の表情が、一気に明るくなった。
「え、そうなんですか!?ちなみに誰が好きなんですか?」
「しいて言うなら……くりのまんじゅうですかね……」
「え!え!私はハチのワレですけど、くりのまんじゅうも好きです」
おい、ムラマツ!ハチのワレが好きなのに、鞄につけているぬいぐるみはちいのかわ、かよ!
……というツッコミはアレとして、ムラマツさんは大興奮という感じだった。確かに同じ物を好きな人に出会うと、思わず高揚してしまう気持ちはわかるが、別に僕はただストーリーを知っているだけで、ファンというわけではない。ここまではしゃぐか?と不思議だった。
ちなみに僕がレジに商品を持っていこうとすると、ムラマツさんは「既にこのキーホルダーは持っているけど、保存用に買おうかな」と 言い、購入していた。熱烈なファンの方の中には、同じグッズを何個も買う人もいるらしいが、本当に保存用にグッズを買う人いるんだ……と、これまた不思議な気持ちだった。
「ホピ沢さん、一緒にバスに戻りましょう」
