2026年5月12日火曜日

40代男が婚活バスツアーに行ってみた11

自分のことを棚に上げて何言ってるんだ、というお叱りは承知の上だが、ムラマツさんは本当に地味だった。
 

地味というか、野暮ったいというのだろうか。
 
ボリュームがありすぎて収拾つかないのか、ボサボサ黒髪ロングヘア。上下どちらもオーバーサイズ気味のトップスと、ロングスカート。化粧っ気がなさそうなフェイスに、涼しすぎる一重瞼。そして極め付けは、うっすら生えた口髭。全体的に重たい印象を与える、外見だった。 
 
黒や茶色などを多用しているからか、とにかく色が見当たらない、という感じだ。唯一色を感じたところといえば、鞄にぶら下がっている、なんか小さくてかわいいやつの、白いぬいぐるだろうか。 
 
「ところでそのキーホルダー買われるんですか?」
「え……ええ、姪が好きなので、買おうかなと思いまして……」
「あー……じゃあ、ホピ沢さんはお好きではないんですね……」 
「グッズを集めるような好きではないですが、一応漫画は読んでいますよ」 
 
その瞬間、暗かった彼女の表情が、一気に明るくなった。
 
「え、そうなんですか!?ちなみに誰が好きなんですか?」
「しいて言うなら……くりのまんじゅうですかね……」 
「え!え!私はハチのワレですけど、くりのまんじゅうも好きです」
 
おい、ムラマツ!ハチのワレが好きなのに、鞄につけているぬいぐるみはちいのかわ、かよ! 
 
……というツッコミはアレとして、ムラマツさんは大興奮という感じだった。確かに同じ物を好きな人に出会うと、思わず高揚してしまう気持ちはわかるが、別に僕はただストーリーを知っているだけで、ファンというわけではない。ここまではしゃぐか?と不思議だった。
 
ちなみに僕がレジに商品を持っていこうとすると、ムラマツさんは「既にこのキーホルダーは持っているけど、保存用に買おうかな」と 言い、購入していた。熱烈なファンの方の中には、同じグッズを何個も買う人もいるらしいが、本当に保存用にグッズを買う人いるんだ……と、これまた不思議な気持ちだった。
 
「ホピ沢さん、一緒にバスに戻りましょう」
 
断るのは不自然だったので同意したが、僕は微妙な気持ちだった。もしかしたらムラマツさんの登場シーンが、どうにも引っかかっていたのかもしれない。突然気配なく背後から話しかけられたことが、尾を引いている感じだった。
 
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