バスに乗り込み指定された席に向かうと、窓際には、南の島が似合いそうな見た目の女性が、座っていた。
「本日は弊社の婚活バスツアーにご参加いただき、誠にありがとうございます。これよりバスはXX方面に向けて出発致します。ところでみなさま、プロフィールカードのご記入はお済みですか?」
隣の方と挨拶を済ませるや否や、マイクを持った女性添乗員の方が口火を切った。緊張もあってか、バスの中は静かでぽつぽつと会話が聞こえる程度の雰囲気だったが、添乗員さんが話し始めると水を打ったように更にしんっと静まり返った。凍りついた、という表現の方があっているかもしれない。緊迫した空気が流れ始めた。
「今から自己紹介タイムを始めます。私が合図を致しますので、そうしたらお隣の方とプロフィールカードを交換して、お話なさってください。時間は5分です。5分経ちましたら、男性が席を移動し、次の方とお話していただきます。全員の方とお話しできるように致しますので、皆様ご協力をお願い致します。では、はじめてください!」
唐突に始まった自己紹介タイム。一分前まで静寂に包まれていた車内は、嘘のように騒がしくなった。僕も周囲の空気に飲み込まれるように、口を開いた。
「こんにちは。ホピ沢と申します。これ僕の自己紹介カードです」
「こんにちは。ミヤギです。ホピ沢さんは動物がお好きなんですか?」
「はい、犬が好きです。今は一人なのでお迎えしてませんが、生まれてからずっと実家で犬と暮らしていました。ミヤギさんは?」
「私も犬が好きで、実家で飼ってます。あ、実家沖縄なんですけど。犬に会うために沖縄に帰ってますね。犬と暮らしたいんですけど、一人だとなかなかお迎えできませんよね」
ミヤギさんはスマホを取り出して、沖縄の実家で飼っている犬の写真を見せてくれた。柴犬とコーギーのミックスらしい。顔は柴犬似だが、耳と体型がコーギーらしさが溢れていて、とても可愛らしかった。僕も、実家に住んでいる犬の写真を見せた。
「うわあ〜!可愛い!男の子ですか?すごくハンサムで、足が長いトイプードルちゃん!」
「ありがとうございます」
