「じゃあ恋愛経験が少ないホピ沢さんに、私が色々教えてあげようかな〜。もう少し女心を学んだ方がいいと思うんですよね。その点、私そういうのは得意なんで!ほら無駄に歳だけは重ねてるから!」
……本当に僕はどうするべきなのか、何もわからなかった。
「自慢じゃないですけど、これまで結構色々な男性を教育し、育ててきたんですよ。中には、教育し甲斐のない男性もいましたけど。まあほとんどは、いい感じに羽ばたいていきましたよ。恋愛経験が少ないホピ沢さんは、相当教え甲斐があるなあって感じです」
Dさんはこれを素で言っているのだから、心底恐ろしい。僕は怒りも呆れもを通り越して、無だった。虚無に沈んでいたというべきだろうか。というかDさんが色々教える女心というものは……世間一般の女心ではなく、Dさん限定の女心だよな……?
「……すみません。結構です」
「え、即答?遠慮しなくてもいいのに〜」
「いえ、遠慮ではなく、本当に結構です」
「えー?でもそれじゃあ、恋愛経験少ないままじゃないですか?学べなくないですか?」
「……それでも構いません。僕の目標は結婚であって、恋愛経験が豊富になることではありません」
Dさんの口撃をなんとか交わしながら、僕は疲弊していた。言葉を選んでいる余裕なんて、ない。気を抜けば流される気がしたのだ。つーかなんなんだよ、この会話!恋愛を教えるってなんだよ!
「うーん、でも恋愛経験を積み重ねないと、婚活うまくいきませんよね?」
「……そもそもDさんに教わったからとはいえ、恋愛経験が豊富になるとは思いません」
「ならないかもしれないけど、今よりはなりますよ?だってとりあえず私と付き合うってことですから」
「え!?」
Dさんと僕が……付き合う????
「やだなあ、ホピ沢さん。何その反応。どうやって教わるつもりだったんですかあ?付き合わないで教えられるわけないじゃないですか。まさか講義スタイルで学ぶとでも思ったんですか?」
ケタケタと笑って追い詰めてくるDさんが、この世の人とは思えないほど怖かった。そもそもどうして、こういう流れになってしまったのだろう。というか何故僕は、Dさんにぬいぐるみを早く返さねばと躍起になっていたのだろう。
婚活パーティーでDさんとマッチングしたこと、ぬいぐるみを返却するために会ったしたことを、ひどく後悔した。
