Dさんと会うために、待ち合わせ5分前に蒲田駅の改札付近に行った僕は、思わずその光景に目を疑った。なんとDさんは……誰かと言い争いをしていたのだ。
一体何が起こっているのだろう。既に待ち合わせ場所にいたDさんは、険しい表情で見知らぬ女性と対峙していたのだ。蒲田駅は人通りが多く騒がしい上、地域柄、時々様子がおかしい方も見受けられる。だから他人の些細なトラブルにいちいち気を止めない方が多いとはいえ、改札付近で女性二人が目を吊り上げて口論している姿はかなり目立った。僕は不穏な雰囲気に怖気付き、Dさんに近づけない。卑怯な奴だと自覚はしていたが、少し離れたところから様子を伺った。
Dさんが言い争いをしている相手は、小太りの中年女性だった。外見だけで判断するのは良くないが、全身をブランド品で武装し自分磨きを徹底しているDさんとは真逆の、タイプ。二人の様子からは、知人同士ではなさそうだった。Dさんの声以上にその女性は身振り手振りや声が大きく、離れたところからでも、怒っているのは容易に見てとれた。
ここは、自分が仲裁に入って事態を収拾すべきなのだろうか。いやでも、原因がまったくわからないし、そもそも余計な騒動に巻き込まれたくない。だが、ただ黙って二人の口論が収束するのを見てるだけなのは、卑怯ではないだろうか。そんな葛藤を繰り広げていると、いつの間にか駅員さんらしき方が、Dさんとその女性の間に割って入っていた。
さすがにDさんとその女性も、第三者の登場には気が引けたのだろう。威勢の良かった二人は、途端におとなしくなった。そして女性は逃げるようにその場を離れ、Dさんも改札付近から駅ビルの入り口手前に移動し始めた。
「Dさん、こんにちは。遅くなってすみません」
タイミングを見計らって、僕は恐る恐るDさんに声をかけた。本当に僕は嫌な奴だなと思う。
「いえ、全然大丈夫です」
当初Dさんは少し顔が強張っていた様子だったが、二言三言話すと調子を取り戻した。そして
「聞いてくださいよ!今すごくムカつくことがあったんです!」
